幹細胞に対するRspondinシグナルの検討を行うため、Tff1-Cre;tetO-Rspo3;R26-LSL-rtTAマウスマウス、およびその受容体のLgr4・Lgr5の条件的ノックアウトマウス(Lgr4flox/flox、Lgr5flox/flox)を用いた解析を継続した。その結果、原則としてRspondin3はLgr5ではなくLgr4を介して主細胞への分化を誘導する働きがあり、Lgr4をノックアウトするとこの分化が障害され、細胞増殖や粘液産生が異常に亢進することがわかった。一方、Lgr5のノックアウトマウスを用いた解析では、Lgr4でみられたような分化に与える影響は確認されなかった。頸部粘液細胞を標識するMuc6FlpER;R26-FSF-GFPマウス、幹細胞を標識するKitl-CreERT;R26-LSL-RFPマウス、主細胞を標識するGpr30-rtTAマウス・Mist1-CreERT マウス、およびこれらを交配させたマウスを用いた実験により、Rspondin3/Lgr4経路により影響を受ける細胞分画の系譜追跡を実施した。 さらに、頸部粘液細胞から主細胞に分化する中間に位置する、両者のマーカーを共発現する中間細胞を選択的に標識するため、Muc6FlpER;Mist1-CreERT;R26-FSF-LSL-mTFP1マウスを作成して系譜追跡実験を施行した。この中間細胞は定常状態においては分裂能を有さず、緩徐に主細胞に分化し、数ヶ月の経過のうちに消失することがわかった。しかしながら、粘膜障害・再生過程においてはより短期間で消失し、幹細胞から供給される別の細胞系統により再生が行われることが示された。
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