研究課題
発癌や病態形成には、標的細胞における後天的遺伝子異常の蓄積と、組織微小環境を構築する各細胞との細胞連関が関与すると考えられるが、肝臓においてはこの解析をin vitroで可能とする長期培養可能なヒト生理的成熟肝細胞株は存在しない。さらに生理的な培養肝細胞に遺伝子改変群を加えかつ構成細胞の均質化と定量化が可能な多細胞培養体がないために十分な知見は得られていない。本課題では1)長期培養可能なより生理的なヒト成熟肝細胞株の樹立し、2)これに病態形成に関わる後天的遺伝子変異群を順次導入することによる、発癌過程をプロスペクティブに再現しうる人工的発癌モデルの構築を行い、その機能を分析した。ヒトiPS細胞を肝細胞系譜細胞に誘導し、種々の培養条件の探索を行った結果、肝細胞の形質を保持しつつ長期培養可能な肝細胞オルガノイドの三次元培養法を確立した。得られた肝細胞オルガノイドについて形態学的、網羅的遺伝子発現解析、および一細胞解析等を用いて分析し、本オルガノイドの肝細胞としての形質を明らかとし、本オルガノイドの成立に寄与する分子機構を明らかとした。また、ヒトiPS細胞においてゲノム編集を行い、肝癌の臨床検体で認められたゲノム情報をプロスぺクティブに再現する遺伝子改変ヒトiPS細胞を樹立し、肝細胞系譜細胞に分化誘導した際の形質を解析し、特に宿主へのウイルスゲノムが挿入が関与することで、宿主遺伝子のエピゲノム制御の攪乱が生じ、癌化の初期段階に関わることを明らかとした。
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