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2021 年度 実施状況報告書

ヒト病態を再現する心房細動マウスを用いた薬物スクリーニング系構築の挑戦

研究課題

研究課題/領域番号 21K19477
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

古川 哲史  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80251552)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2023-03-31
キーワード心房細動 / マウスモデル / 心不全 / 薬物スクリーニング
研究実績の概要

心房細動は、約1/3で心不全を合併し、残り2/3は心不全を合併しない。心不全を合併した心房細動では、心房筋のK+チャネル遺伝子発現が低下し、活動電位持続時間(APD)が延長している。一方、心不全を合併しない心房細動は、心房筋のK+チャネル遺伝子発現が更新し、APDが短縮している。このように病態が正反対の2タイプの心房細動を同等にとらえ、一括りにして薬物開発を行うことは理にかなっていない。
申請者のグループは、ヒトでしばしば心房細動を合併する拡張型心筋症の原因遺伝子Rbm20のS637A変異を有するRbm20S637A/+マウスを作成した。すると、生後4週より心房細動が出現し、10週には全例で発作性心房細動を呈した(Sci. Rep. 2020;10(1), 17894)。すなわち、世界初のヒト心房細動の自然歴を再現するマウスモデルを確立することに成功した。Rbm20のS637A変異はヒト拡張型心筋症の原因遺伝子であり、「心不全を合併した心房細動モデル」と考えられる。そこで、今年度はもう一方の「心不全を合併しない心房細動モデル」構築にチャレンジした。
Sln-creマウスとmerCremer-Rbm20S637A/S637Aマウスを交配することによって心房筋特異的なRbm20S637A/S637Aマウスを作成した。心房筋特異的Rbm20S637A/+マウスで、心エコー検査、心室筋BNP遺伝子発現解析で、心不全を合併しないことを確認した。自分たちが使用している動物実験室で感染事象が発生したため、一度動物をすべて殺傷処分とし、部屋全体をクリーニングして再開する必要が生じたため、その特性の評価まで進めることができなかったが、「心不全を合併しない心房細動モデル」確立のめどは立った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究計画の鍵を握るも目標である「心不全を合併しない心房細動モデル」構築のめどは立ったが、自分たちが使用している動物実験室で感染事象が発生したため、一度動物をすべて殺傷処分とし、部屋全体をクリーニングして再開する必要が生じた。そのため、その特性の評価まで進めることができなかったので、「やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

「心不全を合併しない心房細動モデル」構築が確認するために、2つのことを以下の検討する:(1)全心臓Rbm20S637A/+マウスと心房筋特異的Rbm20S637A/+マウスの心房筋で、K+チャネル遺伝子発現を解析する;(2)全心臓Rbm20S637A/+マウスと心房筋特異的Rbm20S637A/+マウスにおいてoptical mapping法で活動電位を記録し、心不全合併心房細動ではAPD延長、非心不全合併心房細動ではAPD短縮が再現されるか検討する。
以上から「心不全を合併しない心房細動モデル」が構築されたことが確認されたら、する全心臓Rbm20S637A/+マウス・心房筋特異的Rbm20S637A/+マウスマウスから心房筋を単離し、初代培養系で薬物スクリーニングシステムを構築する。この系を用いて次の2つを検討する;(1) MEAシステムを用いて電気生理学的解析を行う。培養系の心筋シートでも不整脈が検出される場合は、不整脈に対する効果をアウトプットとして薬物評価を行う;(2)不整脈が検出されない場合は、APDに対する効果をアウトプットとする。すなわち、心臓Rbm20S637A/+マウスから単離した心房筋細胞では、APDの短縮をもって効果ありと判定し、心房筋特異的Rbm20S637A/S637Aマウスから単離した心房筋ではAPDの延長をもって効果ありと判定する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Local Injection of Hydroxyapatite Electret Ameliorated Infarct Size After Myocardial Infarction2022

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi Junji、Chiba Risako、Komuro Hiroaki、Ihara Kensuke、Nozaki Kosuke、Nagai Akiko、Furukawa Tetsushi、Sasano Tetsuo
    • 雑誌名

      Circulation Reports

      巻: 4 ページ: 38~47

    • DOI

      10.1253/circrep.CR-21-0100

    • 査読あり
  • [学会発表] Atrial Fibrillation in Cardiomyopathy Mice with Rbm20 Mutation2022

    • 著者名/発表者名
      Ihara K, Kuroyanagi H, Hiraoka Y, Sasano T, Furukawa T
    • 学会等名
      The 86th Annual Scientific Meeting of the Japanese Circulation Society
    • 招待講演
  • [学会発表] The effects of Sacubitril/Valsartan on murine atria with pressure overload2022

    • 著者名/発表者名
      Iwamiya S, Ihara K, Furukawa T, Sasano T
    • 学会等名
      The 86th Annual Scientific Meeting of the Japanese Circulation Society
  • [学会発表] 心不全モデルのマウス心房に対するSacubitril/Valsartanの電気生理学的効果2021

    • 著者名/発表者名
      岩宮賢、井原健介、古川哲史、笹野哲郎
    • 学会等名
      第262回日本循環器学会関東甲信越地方会
  • [学会発表] The effects of Sacubitril/Valsartan on electrophysiological properties of atria in murine hearts with pressure overload2021

    • 著者名/発表者名
      Iwamiya S, Ihara K, Furukawa T, Sasano T
    • 学会等名
      The 5th JCS Council Forum on Basic CardioVascular Research
  • [学会発表] 心房細動モデルマウスのoptical mapping による評価2021

    • 著者名/発表者名
      岩宮賢、井原健介、富井直輝、山崎正俊、黒柳秀人、佐久間一郎、古川哲史、笹野哲郎
    • 学会等名
      心電学関連春季大会2021
    • 招待講演
  • [学会発表] 心不全モデルマウスにおけるSacubitril/Valsartanの心房への電気生理学的効果2021

    • 著者名/発表者名
      岩宮賢、井原健介、古川哲史、笹野哲郎
    • 学会等名
      心電学関連春季大会2021

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公開日: 2022-12-28  

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