RBM20はスプライシング制御因子であり、その機能喪失変異はタイチン(TTN)遺伝子を含む複数の標的遺伝子のスプライシング異常を介して拡張型心筋症(DCM)を生じるとされてきた。我々は、Rbm20S634Aマウスは、世界初のヒト類似の自然発症慢性心房細動を発症することを明らかにした、そこで、Rbm20S634Aマウスが心房細動を発症する分子メカニズムを検討した。RBM20変異によるDCM症例において変異が集中するRSRSP配列がRBM20の核移行に重要であること、RSRSP配列の変異はRBM20の核移行能の喪失をもたらし細胞質において凝集体を形成すること、これにより細胞質での新たな機能を獲得することがDCM発症やその不整脈原性(特に心房細動)に重要であることを報告してきた。今年度は、RBM20に対するRNA免疫沈降で変異型RBM20凝集体に内包されるmRNAの解析を行った。その結果、RBM20と結合するRNAは遺伝子発現低下を示しやすいことが示唆された。また、変異型RBM20凝集体は細胞質におけるRNA顆粒と考えられるが、生理的に細胞質においてRNA代謝を司るRNA顆粒としてP-bodyが知られている。変異型RBM20凝集体とP-bodyの免疫染色を行ったところ、凝集体とP-BodyマーカーであるDDX6が共局在していることがみとめられた。すなわち、変異型RBM20はP-bodyに局在し、P-bodyが本来有するRNA代謝に変容をきたすことが、DCM発症や心房細動発症に関与していることが示唆された。 本プロジェクトで、細胞質のP-bodyにおけるRNA代謝障害が、ヒト類似の自然発症心房細動をもたらすことを明らかにした。
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