研究課題/領域番号 |
21K19486
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
澤 新一郎 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (80611756)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | ILC3 / RORgt / STAT5 / in vitro |
研究実績の概要 |
粘膜や皮膚は外界との境界領域で生体防御の最前線を担うバリア組織である。3型自然リンパ球(ILC3)はRORgt陽性Lineageマーカー陰性の希少自然リンパ球であり、粘膜バリアの維持に必須の役割を果たす。これまでloss of functionによりILC3の機能証明を行ってきた研究は多いが、採取の困難さ、in vitro における培養の困難さが障壁となり、gain of functionによる生体内の役割が十分に検証されてこなかった。 本年度はまず、レトロウイルスを用いてILC3への活性化STAT5b導入を行うための準備を行なった。具体的には、EGFPを発現するILC3へのSTAT5b遺伝子導入効率を簡便に評価するため、 STAT5bとtdTomato をP2A遺伝子で直鎖状に繋いだ融合遺伝子の設計とクローニングを行なった。続いて、ILC3機能を司るマスター制御因子RORgtの発現制御機構の解明をATAC-seq解析によりこころみた。ILC3分化・成熟に伴いRORgt遺伝子領域に特異的に出現するオープンクロマチン領域を2か所(各々Peak1, Peak2と命名)し、CRISPR/cas9により各Peakを欠失するマウス系統を樹立した。そのうち、Peak1と名付けた600bpのRorcイントロン内領域を欠失させたマウスはILC3におけるRORgtタンパク質発現が激減していた。この ATAC-peak内にはDNA ポリメラーゼIIと機能相同性を持つ転写因子結合領域があり、その転写因子によるRORgt遺伝子発現制御機構の存在が予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍において、マウスコロニーの縮小など実験遂行に遅れが生じるとともに、レトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入を主題とした遺伝子組換え実験計画の承認に時間を要した。一方、RORgt遺伝子領域内に新規エンハンサー領域を見出し、それらの領域を欠損するマウスモデルの作出に成功した。ILC3の分化誘導を担う新規メカニズムの解明およびin vitro でのILC3分化誘導をより生理的な条件下で実施可能な準備が整ったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、レトロウイルスを用いたILC3への活性化STAT5b遺伝子導入実験を推進する。さらに、新たに見出したRORgt発現制御領域(RORgt-Peak1)に集積する主要な転写因子結合予測配列についてゲノム編集による変異導入と各変異マウス系統の樹立を試みる
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次年度使用額が生じた理由 |
レトロウイルスを用いた遺伝子導入実験計画の承認が遅れ、予定した実験開始時期が遅れたため
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