研究実績の概要 |
粘膜や皮膚は外界との境界領域で生体防御の最前線を担うバリア組織である。3型自然リンパ球(ILC3)はRORgt陽性の希少自然リンパ球であり、粘膜バリアの維持に必須の役割を果たすこと。しかし、希少細胞ゆえに細胞内のシグナル伝達経路、特にマスター制御因子であるRORgtの発言制御機構は明らかでない。本研究では、ILC3のin vitroでの機能評価を容易にするため、ILC3の活性化および不死化を実現し、細胞株の樹立を試みた。ILC3はIL-7受容体下流のSTAT5活性化を通して細胞の生存および機能が活性化すると予想される。成熟ILC3は成体腸管組織においてほとん分裂増殖しないが、胎仔肝における前駆細胞では活発に増殖する。そこで、令和4年度は①胎仔肝中におけるILC3前駆細胞の同定②恒常的活性型STAT5bをレトロウイルスにより導入するための実験系構築を試みた。 ①胎仔肝中におけるILC3前駆細胞の同定:胎仔の末梢組織に存在するRORgt陽性非T細胞は遺伝子発現や表面抗原の発現パターンから2つの亜集団に分類した。そのうち、IL-7RおよびLTaを高発現する細胞集団は、リンパ組織形成に重要な役割をはたすLymphoid Tissue inducer (LTi細胞)に相当する。他方、CD11b, CSF1Rを発現するRORgt陽性細胞はMHC クラスII関連分子を発現する。それゆえ、前者を「リンパ球系LTi細胞」後者を「ミエロイド系LTi細胞」と命名し、胎児肝臓中には「リンパ球系」、「ミエロイド系」の前駆細胞が各々存在すことを明らかにした。 ②活性型STAT5b遺伝子導入系の構築:活性型STAT5遺伝子と蛍光タンパク質であるtdTomatoをタンデムに繋ぎ、レトロウイルスベクターを用いてT細胞株であるJarkat細胞に95%以上の効率で遺伝子導入する実験系の構築に成功した。
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