研究実績の概要 |
獲得免疫系の主役をなす細胞性免疫に関わるT細胞は、抗原特異的な受容体としてT細胞受容体(T-cell receptor:TCR)を発現している.TCRの抗原結合部位は、遺伝子再構成により決定され、ヒトの体内では膨大な多様性を獲得している。本研究では昨年度に引き続き、各HLAアレルに対するネオアンチゲン数とT細胞受容体の多様性(TCRレパトアプロファイル)との相関を検討し、肺がんリスクとの関連について検討を行った。既取得肺腺がん組織検体由来RNAシークエンスデータ1,612例を用いて、mixcr (Dmitriy A et al., Nature Biotechnology 2017)プログラムを用いて検討を行った。まずRNAシークエンスの解析手法(PolyA、RIBOZERO、RIBOZERO-Plus、SMART-seq)による影響がないかを検討した。その結果、SMART-seqではTCRレパトアを検出することができなかった。一方同一症例に対して実施したPolyA、RIBOZERO-Plusに対して、mixcrによるTCRレパトア解析を実施し、down samplingによる正規化した数値を用いた相関を検討した。その結果、相関はあったものの値にばらつきが認められたため、解析手法に分けて検討する必要があった。全エクソンシークエンスデータ1162例については、HLAHDプログラムを用いてHLA型を推定した。最も解析数が多いPolyAに着目して、HLAアリル、各HLAアリルに対するLOH(ヘテロ接合性喪失)の有無、臨床因子(性別、年齢、組織型、喫煙歴)などとの相関性の有無を検討したところ、性別、年齢においてばらつきが認められた。またその傾向はプラットフォームによらず、認められた。現在交絡因子を考慮した多変量解析を実施している。
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