研究実績の概要 |
ゲノムワイド関連解析によって、多くの自己免疫疾患感受性領域が同定されたが、これらが説明する遺伝性は50%にも満たない。残された遺伝因子として有力なのが、ゲノム配列の約半分をしめる反復配列である。中でも内在性レトロエレメントは、自然免疫刺激下においてRNAを転写し免疫を活性化する。これには負の制御機構も備わっているが、この制御が破綻すると、自己免疫疾患の発症につながると考えられる。本研究ではその背景にある遺伝因子としてレトロエレメント自体の多型に注目した。まず、日本人の不死化B細胞株(n=27)のロングリード全ゲノムシークエンスを行うことにより、レトロエレメント多型のカタログを作成した。また自然免疫刺激(した細胞(IFN-α刺激、n=94)を用いて、ロングリードシークエンスによるRNAの網羅的解析を行い、163,747 種のRNA isoformsカタログを作製した(isoISG)。これらのRNA は既知の遺伝子から転写され、選択的スプライシングによって配列が変化したものも含むが、その多くはレトロエレメントを配列に含んでいた。また、約8割は既存のGENCODEに登録されていない新規のものであり、一部はレトロエレメントを含む未知の遺伝子領域から転写されるものであった、。また、これらのRNAの発現に影響する遺伝子多型を網羅的に明らかにし、既存の自己免疫疾患のゲノムワイド関連解析データと統合解析することによって、自己免疫疾患に関わるものを網羅的に同定した。
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