研究課題/領域番号 |
21K19503
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
篁 俊成 金沢大学, 医学系, 教授 (00324111)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 糖尿病 / 肝臓遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝硬変と肝細胞癌の主要な原因疾患であるが、非侵襲的な診断・予後予測法は確立していない。本研究の最終目標は、肝生検をしなくても肝病理を診断・予知する医療の実現である。申請者は先に、日本人非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD)患者を対照とした連続肝生検解析から、従来最も大きなリスクファクターと考えられてきた肥満よりも、高血糖の方が脂肪肝から炎症・線維化へのリスクが高いという、糖尿病性脂肪肝炎 (Diabetic steatohepatitis, DiSH)の病理概念を想起した (Diabetes Care 2010)。本研究では、1998年以降に臨床的にNAFLDと診断され、2回以上の連続肝生検を施行した患者118名を最長15年間、平均3.8年間観察した。2021年度には、連続肝生検を実施した118症例から得た延べ342の肝生検サンプルの、脂肪化、ballooning変性、小葉内炎症、線維化を、Matteoni分類、NAFLD activity score、Brunt分類として一人の病理医により系統的に再スコア化した。一般線形混合モデルを用いて、NAFLD病理の時間的・組織学的変化と、性別、年齢、BMI、HbA1c、血液生化学データ等の臨床パラメーターとの関連を解析し、肝脂肪化・炎症・線維化進展と関連して変動する因子を抽出した。一般線形混合モデル解析では、糖尿病合併の有無で、患病理進展と関連する臨床パラメーターは大きく異なっていた。糖尿病を有するNAFLD患者では、観察期間中の体重増加が肝脂肪化の進展と、HbA1c上昇が肝炎症/線維化の進展と、それぞれ有意に関連した。さらに、病理スコアが変化したNAFLD症例39名から得た延べ94の肝生検サンプルからRNAを抽出し、RNAseq解析 (mRNA・miR・lncR)を行った 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝脂肪化・炎症・線維化進展と関連して変動する因子の抽出を終え、論文投稿中である。肥満症の程度が大きい欧米人と異なり、体重増加にもまして血糖コントロール不良が肝線維化を進展されるという結論はなかなか受け入れられず、論文受理に至っていない。肝病理と関連して変動する肝臓遺伝子発現プロファイルと合わせて投稿するべく、解析を進めている途上である。ただし、従来の固定概念を超える結論が得られているので、まとめ方を工夫することで、肥満の軽度な日本人ならではの糖尿病脂肪肝炎の疾病概念を提唱したい。肝線維化進展と関連する病態に次いで、肝脂肪化、炎症/変性と関連する病態を報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
連続肝生検経過の遺伝子発現プロファイル変化から、non-biasに発現変動遺伝子群をグルーピングするWGCNA (Weighted correlation network analysis)、および深層学習を用いた重要遺伝子探索を進めている。別研究で進めている糖尿病脂肪肝炎モデル動物での所見と比較解析することで、診断治療の標的遺伝子の同定を目指したい。
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