研究実績の概要 |
膵ベータ細胞からのインスリン分泌の障害は糖尿病の発症や重症化を阻止するうえで克服すべき重要な課題である。特に日本人を含む東アジア人は、他民族と比してインスリン分泌量が低いためインスリン分泌障害の問題はなお深刻である。本研究では、膵β増殖をリアルタイムに観察可能なベータFucciマウス(Diabetes. 2020 Nov;69(11):2340-2351)を樹立し、その単離膵島細胞を3次元培養もしくは2次元で最長1週間の間、ex vivoで培養することに成功した。特に2次元培養においては、種々のプレートを検討するなかで、日本ジェネティクス社製マイクロSlide I Luerを用いることで安定して培養が可能かつ、11.1 mMグルコースを含むRPMIに膵ベータ細胞増殖作用が知られるDYRK阻害薬のひとつHarmineを添加することで、ex vivoにおいてもベータFucciマウス由来膵ベータ細胞が増殖することを確認しえた。一方、膵ベータ細胞増殖を誘導する目的でグルコース濃度を20.0 mMまで上昇させるもしくは、GKA活性薬を添加した場合にはベータFucciマウス由来膵ベータ細胞の増殖は認めなかった。現在、樹立したアッセイ系を用いて低分子化合物(低分子化合物ライブラリー(Sigma-aldrich社既知の阻害剤1,200化合物、GPCRをターゲットにした指向性ライブラリー 2,000化合物、ChemDiv社drug-like構造多様性ライブラリー約10,000化合物を含む)をスクリーニングしている。
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