研究課題/領域番号 |
21K19505
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
早川 文彦 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (30402580)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 分化誘導療法 / スプライシング誘導 / MEF2D / 白血病 |
研究実績の概要 |
筋細胞分化の転写因子MEF2Dのexon 3にはα1とα2の2種類があり相互排他的に使い分けられている(MEF2D α1、MEF2D α2 )。MEF2D α1はHDAC4と結合し分化に抑制的に作用するが、MEF2D α2はASH2Lと結合し分化誘導に働くと考えられている。RNA結合蛋白RBFOX2は、スプライシングにおけるα2 exonの選択を誘導してMEF2D α2を発現させることで、筋芽細胞の分化を促進すると考えられている。MEF2Dはリンパ球分化制御にも働いており、一部の急性リンパ性白血病(ALL)で認められるMEF2D融合タンパクが、PAX5の機能を抑制することでリンパ球分化を抑制し、ALL発症に関与すると考えられている。本研究では、MEF2D融合遺伝子陽性ALLに対して、MEF2D融合遺伝子のスプライシングにおけるα2エクソンの使用(α2スイッチ)を誘導し、分化誘導型アイソフォームにすることで、MEF2D融合蛋白の分化抑制能を解消する治療法開発を行う。昨年度、α1あるいはα2エクソンを使用するMEF2D-BCL9(MB α1とMB α2)の発現ベクターを作製し、PAX5転写活性抑制能を比較したが、意外なことに両者の抑制能には相違がなかった。 今年度はこの理由を明らかにするために、MB α1/MB α2とHDAC4との結合能を調べた。共免疫沈降で細胞内でのM-BとHDAC4との結合を調べた所、MB α2にもM-Bα1より弱いものの、HDAC4との結合が認められ、これがM-Bα2にもPAX5転写活性抑制能が認められた原因と考えられた。MEF2Dをリン酸化する作用があるprotein kinase A (PKA) がM-BとHDAC4の結合を増強することを発見し、PKA阻害剤を併用してみたがM-Bα2のPAX5転写活性抑制能は減弱しなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予想に反してM-Bα2にもPAX5転写活性抑制能が維持されていたため、その原因の探索と、探索の結果原因の一つと考えられたPKAによるM-Bリン酸化をPKA阻害剤で阻害することの効果の検討に時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
ここまでの結果は、野生型MEF2Dと異なり、α2スイッチが起きてもM-BとHDAC4の結合は期待するほどには弱まらず、PAX5転写活性抑制も解除されないことを示唆している。しかし、α2スイッチによる予想外の効果が得られる可能性はあるため、M-B陽性ALL細胞株にドキシサイクリン誘導性RBFOX2発現ベクターを安定導入し、RBFOX2発現誘導によりM-Bのα2スイッチが誘導できるか、それによるPAX5転写標的遺伝子の発現に変化があるかを検証する。またHDAC4を含むClassII HDAC選択的阻害剤がM-B陽性ALL細胞株の増殖に抑制的な効果を示すかを検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
必要物品購入後、軽微な残予算が発生した。次年度の研究で必要な消耗品の購入にあてる。軽微な額であるので研究計画に変更はない。
|