研究実績の概要 |
CAR(キメラ抗原受容体)とはがん特異的な抗体の抗原認識部位とT細胞活性化分子とを融合した人工的な受容体で、CARを遺伝子導入により発現させたCAR-T細胞はがん特異的抗原を認識すると活性化し、がん細胞を傷害するとともに激しく増殖する。B細胞性白血病/悪性リンパ腫に対するCD19を標的としたCAR-T細胞は驚くべき臨床効果を示した。申請者らは多発性骨髄腫においてインテグリンbeta7が恒常的に活性化していることを発見し、活性型インテグリンbeta 7を特異的に認識するCAR-T細胞が高い抗骨髄腫活性を持つことを示した (Hosen N et al. Nature Medicine, 2017)。CAR-T細胞に関する一つの大きな問題は、患者毎に自己のT細胞から作る必要があり、コストが莫大であることである。一方、HLAに拘束されない細胞傷害性細胞であるNK細胞であれば、アロのドナーから多数の患者用の細胞が作れる可能性があると考えられる。実際、臍帯血から誘導したCAR-NK細胞の有効性が最近報告された。しかし、既報のCAR-NK細胞は、実際には非常にheterogeneousな“NK-like cell”集団であると考えられる。そこで、本研究においては、まず、上述の活性型インテグリンbeta 7を標的としたCARをヒト臍帯血単核球に導入し、既報(N Engl J Med, 382, 545-553, 2020)に従いCAR-NK細胞の作製を行い、in vitroでの抗腫瘍効果を確認した。さらに、CAR-NK細胞のheterogeneityの解析の為single cell RNA seq解析を行った。その結果を現在待っている段階である。また、in vivoでの効果の検討にも取り掛かっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性型インテグリンbeta 7を標的としたCARをヒト臍帯血単核球に導入し、既報(N Engl J Med, 382, 545-553, 2020)に従いCAR-NK細胞の作製を行い、in vitroでの抗腫瘍効果を確認した。さらに、CAR-NK細胞のheterogeneityの解析の為single cell RNA seq解析を行った。計画書に記載した予定通りの進捗である。
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