研究実績の概要 |
膵β細胞におけるオートファジーを制御し、膵β細胞機能不全を改善することが糖尿病の新規治療法の創出につながると考え、膵β細胞におけるオートファジー誘導薬の同定を試みた。まず、オートファジー活性の指標であるオートファジーフラックスを定量可能な蛍光プローブであるpHluroin-LC3-mCherryを発現する膵β細胞株MIN6細胞を作製した。この細胞では、pHluorin/mCherry比の低下によってオートファジーフラックスの亢進を評価することができる。次に、この細胞を用いて、9,600種類の低分子化合物ライブラリーに対してIncucyteによるリアルタイム蛍光イメージングによりハイスループット・スクリーニングを実施した。一次スクリーニングではpHluorin/mCherry比のカットオフ値を0.91として、オートファジーフラックスを活性化する化合物を108個同定した。さらに、pHluorin-LC3-mCherryプローブを発現したAtg5 KO細胞をこれらの化合物で刺激し、オートファジーフラックス活性化剤であるTorin-1による刺激時と比較して、さらにpHluorin/mCherry比が低下した24化合物は非特異的反応として除外した。残りの84化合物を用い、用量依存性反応を検討する二次スクリーニングを行った。最終的に濃度依存性にオートファジーフラックスを亢進させる4化合物の同定に至った。最後に、これらの化合物の有用性を明らかにするため、パルミチン酸投与による脂肪毒性モデルを用いた検討を行なった。MIN6細胞では、パルミチン酸による短時間の刺激でオートファジーフラックスが活性化され、長時間刺激により抑制に転ずるが、同定された化合物の併用によりその抑制が改善することが示された。
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