今年度も、引き続きスクリーニング評価系の構築を行った。特にルシフェラーゼ活性をバックグランドを抑えつつ高感度に検出可能なシステムの構築を試みている。これに並行して、異なる戦略のスクリーニング方法の樹立にも着手した。まず、細胞膜およびオルガネラ膜におけるイノシトールリン脂質を、特異性高く、かつ高感度に検出可能なプローブの開発を行った。先行研究において、オキシステロール結合タンパク質ファミリー分子群のPHドメインが細胞膜やオルガネラ膜のイノシトールリン脂質を特異的に認識し結合することを見出している。そこでオキシステロール結合タンパク質ORP9に着目し、そのPHドメインの局在を解析したところ、細胞膜、ゴルジ体、エンドソーム、リソソームに特異的に局在することが判明した。特に、細胞膜局在性については、これまで開発されている他のイノシトールリン脂質プローブに比べて高S/N、かつ高親和性を示した。さらに阻害剤やケミカルバイオロジー手法を用いたイノシトールリン脂質操作法によりその局在化や挙動をイメージング解析し、そのイノシトールリン脂質種特異性を決定した。これらの解析から、新たな細胞膜イノシトールリン脂質の特異的プローブの樹立に成功した。そこで、この新規プローブをベースにして、スクリーニング系の樹立に着手した。これまでのところ、細胞膜イノシトールリン脂質の変化を高感度にリアルタイム定量計測可能なシステムの構築が樹立されつつある。
|