研究課題
結果概要:第二年度では、引き続きNOAの遺伝的要因・環境要因の探索を行なった。遺伝的要因としては、新たに『IL17A』『TNF』を特定した。、Il1rn, Il1r2二重欠損マウスは妊孕性を失いその中の一部が精子形成不全/NOAを呈する。しかし、IL17AあるいはTNFを欠損したIl1rn, Il1r2二重欠損マウスは妊孕性を有しており、自然交配により産仔が得られることを確認した。つまり、IL17A、TNFは共にIL1Aの下流で機能しNOA病態形成に加担することが明らかとなった。環境要因としては、新たにDMXAAを見出した。この試薬により擬似ウイルス感染状態を作り出すことで、精子形成能力が低下することを突き止めた。実際、DMXAA投与群は精細管における生殖細胞脱落とそれに伴う精上皮空胞が見られた。この結果は、同一個体精巣状態における異所性の円型精子細胞の存在と一致する。こうした個体では精嚢腺の退縮が見られることから、精巣での男性ホルモン産生能力低下がNOAの要因として加担していると推察された。また、遺伝的要因と環境要因を組み合わせてストレスを付加すると、より強い症状が出ることを確認した。意義・重要性:NOAは病態を引き起こす病原体・責任遺伝子が特定されていない一方、肥満・加齢・喫煙・睡眠不足などの生活習慣関連要因の関与が示唆されている。このことから代表者は『NOAは遺伝的要因・環境要因の相互作用により発症する多因子性疾患である』という仮説を立てて研究を進めている。本年度に得られた結果は、遺伝的要因と環境要因の相互作用が病態制御に関わることを示唆するものであり、仮説を裏付ける結果の一つであると考えている。
2: おおむね順調に進展している
概要に記載した通り、順調に結果が得られているため、上記区分と判断した。
最終年度も引き続き『遺伝的要因と環境要因の探索』『2つの組み合わせによる多様な重篤度のNOA病態の再現の試み』を続ける。これに加え、これまでとは異なる仕組みで働く遺伝的要因候補を発見したので、これに関しNOAとの因果関係や作用機序を解析する。
初年度・次年度に使用する予定であった研究費で余剰が生じた理由は、コロナ感染拡大の影響により実施実験の削減を余儀なくされたこと、実験実施数の削減に伴い実験動物飼育数を抑制したこと、実施実験経費を節約したこと、初年度経費を研究代表者の機関内研究費でまかなえたこと、実施実験に使用する試薬を元々所有していた試薬でまかなったこと、コロナ禍による学会のオンライン出席に伴う旅費の支出減、が挙げられる。余剰金の支出計画としては、計画していた研究の実施、学会出席費用、及び当初予定になかった新しい遺伝的要因の解析にかかるゲノム編集マウスの作出費用、を予定している。
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