研究課題/領域番号 |
21K19525
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
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研究分担者 |
神田 光郎 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (00644668)
田中 千恵 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (50589786)
清水 大 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50723037)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 食道癌 / 血行性転移 / リンパ節転移 / Transcriptome解析 / コンパニオン診断 |
研究実績の概要 |
食道癌は多様な進展経路を持つ予後不良な疾患であり、転移を制御できない限り治療成績の大幅な改善を得ることは不可能である。食道癌の予後を左右する主な転移再発形式として血行性転移とリンパ節転移が存在するが、この2つの転移の経路やメカニズムは全く性質が異なるものであり、転移経路ごとに特異的な分子が存在という仮説を立てた。本研究は、各転移形式に特有の責任分子を同定し、その食道癌転移における役割を解明することを目的として遂行している。食道癌転移経路特異的Transcriptome解析により、血行性転移群とリンパ行性転移で発現パターンが明瞭に異なるクラスターがあることが示され、血行性転移関連分子とリンパ行性転移関連分子から候補分子を厳選した。まず、より予後が不良な血行性転移群から、NECAB2を抽出し実験系を確立する意味でもこれについて詳細な解析を進めている。令和3年度は、NECAB2の発現解析と、人為的発現調節による食道癌細胞株の悪性形質がどのように変化するかについて実験を行った。siRNAを用いたノックダウンにより、癌転移に重要な細胞機能である浸潤能、遊走能、接着能が抑制された。shRNAによる安定的ノックダウン株を樹立し、同様に細胞機能を調査したところ、再現性のある結果が得られた。発現ベクターによりNECAB2を強制発現すると、食道癌細胞株の増殖能が増強した。多施設共同研究体制による独立した2つの食道扁平上皮癌コホートにおいてNECAB2のmRNAおよびタンパク発現レベルを調査したところ、いずれにおいてもNECAB2高発現症例群で有意に予後不良であり血行性再発頻度も高かった。NECAB2を追って、血行性転移関連分子2分子、リンパ行性転移関連分子2分子について同様の実験系を進めており、令和5年度までの解析対象を厳選していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は計画した実験系を確立すること、仮説の実現性を得ることに重きを置き、重要度の高い血行性転移に関連の高いNECAB2について集中的に解析を進めた。発現調節の条件設定が順調に完了したことで、機能解析データの構築が順調に進んだ。発現解析データについても、入口の網羅的遺伝子発現データの結果と一致しており、本コンセプトの再現性を示すことができた。令和4年度は先行している分子についてin vivoデータを取得するとともに、リンパ行性転移関連分子に解析対象を拡大していく。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、データ構築の先行している食道癌血行性転移関連分子NECAB2については、以下の実験を行う。 1) 発現調節による癌細胞機能の評価:人工的発現抑制により、アポトーシス、細胞周期、スフェロイド形成能、食道癌のKey drugである5-FUおよびCDDP感受性、マウス皮下腫瘍モデルでの造腫瘍能がどのように変化するかについて解析する。 2) シグナル解析:癌関連主要細胞内シグナル伝達経路の発現、リン酸化がNECAB2発現とどのような関連性をもつかについて調査する。 3) in vivo転移形成能の比較:マウス全身転移モデルにおける転移形成能についてモニタリングする。マウスモデルはすでに確立している。 NECAB2以外の候補分子についても、in vitro機能解析、発現解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックダウン試薬、細胞培養、細胞機能解析に必要な試薬類、キット類を効率的に使用することで節約ができたため、経費に未使用分が生じたが、次年度以降には多くの分子を対象に横断的解析を行うため、次年度使用経費は細胞培養試薬類、機能解析キット類に使用する予定である。
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