本計画では、標準的な方法を凌駕する画期的な新技術を開発するために、腫瘍の根源となる「がん幹細胞」を分離培養し、そこから分泌される「細胞外小胞」の『中身』の増殖(RNA配列)と(1)代謝(RNAメチル化)に加えて、『殻』の脂質二重膜として、(2)組織と(3)分化の情報を加えた4要素を粒子レベルで把握し、がんの生物学的な悪性度を最高レベルの解像度で理解できる革新的な技術を開発した。手術で取得されたがん組織からオルガノイドを作成し、患者の状態を反映するモデルを用いて生物学的なメカニズム解析を実施した。検出系は、がん幹細胞の表面抗原は、CD133、CD44、CD13等のマーカーを用いてFACSで分離し、ES細胞培養で用いているメディウムの中で増幅させて、検討を加えた。RNAメチル化は質量分析とナノシークエンスを組み合わせて実施し、一分子レベルの大容量データを格納した。長いアライメントの情報はRNAメチル化塩基に対する特異的抗体で免疫沈降した後に次世代シークエンスを実施して解析した。空間情報は、ビジウム解析を時系列を追って実施した。これらの結果、細胞外分泌小胞の性状と対応した形で、膵がんで特徴的なRNAメチル化標的遺伝子を同定し、大阪大学の知的財産として整備を進め、実験的な技術のノウハウに関しては論文及び学会発表で公表することを進めた。このように本研究において末梢血の細胞外分泌小胞のリキッドバイオプシーに基づくがん幹細胞のプロファイリングに向けて、バイオマーカーの基盤を構築することができた。
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