研究課題/領域番号 |
21K19531
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 雅史 九州大学, 医学研究院, 教授 (30372741)
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研究分担者 |
甲斐 昌也 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10755242)
小薗 真吾 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40706850)
久保 真 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60403961)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 治療抵抗性 / 腫瘍免疫微小環境 / 膵癌 / scRNA-seq / オルガノイド |
研究実績の概要 |
膵癌は様々な治療に対し強い抵抗性を示す予後不良な癌の一種であり、その抵抗性の獲得には腫瘍免疫微小環境の関与が重要と考えられており、その治療抵抗性獲得の機序の解明が急務となっている。これまで膵癌における治療抵抗性獲得機序の解明の研究の多くは治療耐性株などの癌細胞のみを標的にしたものや癌関連線維芽細胞を対象とするものが多く、腫瘍免疫と治療体制との関連についての報告は膵癌においては認めない。今回、抗がん剤治療や放射線治療、癌免疫治療を施行した自然発癌マウス由来膵癌組織から免疫系を構築したALIオルガノイドモデルを樹立し、腫瘍免疫を含めた治療応答機序および抵抗性獲得に関わる機能的な細胞集団や微小環境変化を新たに同定することや、その細胞集団の機能的特徴を解明することで新規標的治療の開発へつなげることを目的として研究を開始した。 まず、術前治療奏功性/抵抗性に関わる腫瘍免疫微小環境因子を検索するために、既に採取済であるヒト切除検体のscRNAseq解析を用いて解析を行った。当研究室では食道癌・胃癌・大腸癌・膵癌などの多様な消化器癌におけるscRNAseqを実施しているが、特に術前化学療法施行症例が多い食道癌に注目して解析を行った。正常部7例・癌部10例(化学療法施行群5例、未施行群5例)を含めた17検体を用いてscRNAseqを行ったところ、Tリンパ球・Bリンパ球などの主要な免疫細胞が同定され、特にTリンパ球が最も多く認められた。また、正常部と比較し腫瘍部でTリンパ球が多い傾向を認めた。次に、術前治療の有無での変化に着目し解析を進めた。術前治療施行群では形質細胞が増加し抗体産生能も有意に上昇していた。CD8陽性Tリンパ球は術前治療施行群で疲弊化関連遺伝子が低下していた。以上により、術前治療に伴う腫瘍免疫微小環境の変化を単一細胞レベルでとらえることができた。
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