研究課題/領域番号 |
21K19532
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久保 真 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60403961)
|
研究分担者 |
甲斐 昌也 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10755242)
森 瞳美 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (70795541)
森崎 隆 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90291517)
井手野 昇 九州大学, 医学研究院, 助教 (90883421)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | ネオアンチゲン / 体細胞性遺伝子変異 / ペプチド / TIL |
研究実績の概要 |
がん細胞に特異的に生じる体細胞性遺伝子変異に由来するペプチドであるネオアンチゲン(以下、ネオ抗原)は、がん細胞特異的で、高い免疫原性を持っていることをより深く解明し、臨床応用へと繋げる。 1.乳癌のネオ抗原解析、ネオ抗原ペプチドの作成:(1)ネオ抗原の解析;生検もしくは手術検体より採取した新鮮腫瘍組織から全エクソーム解析とRNAシークエンスを行い、ネオ抗原を解析した。(2)ネオ抗原ペプチドの作製;非同義一塩基置換すなわちアミノ酸置換を伴う遺伝子変異数を算出する。変異ペプチドに応じたRNA発現とHLAに対する親和性をソフトウエアで解析してネオ抗原ペプチドを予測する。 2.転移リンパ節に潜むTILの機能解析:(1)転移リンパ節に潜む腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の機能解析;細胞ひとつひとつの遺伝子発現を調べるシングルセルRNA解析を用い、原発腫瘍と腋窩リンパ節転移の腫瘍微小環境を比較する。また、多重蛍光免疫染色の技術を用いて40種類以上のタンパク質抗原の発現を画像化して「空間情報+プロテオミクス」解析により腫瘍微小環境におけるTILの機能を評価する。(2)細胞医薬・TIL強化療法;腫瘍内もしくは周囲(末梢血を含む)よりTILを採取する。ネオ抗原を認識するエピトープを持つリンパ球を抽出し強化・増殖させる、もしくはネオ抗原ペプチドを認識する樹状細胞と共培養してT細胞を強化する。 3.ネオ抗原ペプチド樹状細胞ワクチンによる強化TILの機能解析:上記で予測されたネオ抗原ペプチドを自己PBMCから樹立した樹状細胞にパルスし、TILと共培養する。TILの強化の意義をElispot試験、細胞障害試験で実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.乳癌のネオ抗原解析、ネオ抗原ペプチドの作成 (1)ネオ抗原の解析;R3年度31例を論文にまとめることができた(論文:森崎ら、Sci Rep 2021*)。ネオ抗原解析の総数は84例となり、順調にバンキングしたサンプル数を増やしている。 (2)ネオ抗原ペプチドの作成;作製したペプチドを樹状細胞に認識させ、がん、T細胞と共培養すると、有効なペプチド群でT細胞は抗腫瘍効果を示すことができた(*)。 2.転移リンパ節に潜むTILの機能解析 (1)転移リンパ節に潜むTILの機能解析;シングルセルRNA-seq解析を用い、原発腫瘍と腋窩リンパ節転移の腫瘍微小環境を比較解析する。現在、腫瘍と転移リンパ節を対にしたサンプルのバンキングを2例に行った。現在、2-(1)でやや遅れがあるものの、調整はおおむね順調である。 *Morisaki T, Kubo M, et al. Neoantigens elicit T cell responses in breast cancer. Sci Rep 2021. Vol.11. 13590. 10.1038/s41598-021-91358-1(査読あり)
|
今後の研究の推進方策 |
2.転移リンパ節に潜むTILの機能解析 (1)転移リンパ節に潜むTILの機能解析;調整から解析の段階に進む。 (2)細胞医薬としての腫瘍浸潤リンパ球(TIL)強化療法;腫瘍細胞内もしくは周囲(末梢血を含む)TILを採取する。ネオ抗原を認識するエピトープを持つリンパ球を抽出し強化・増殖させる、もしくはネオ抗原ペプチドを認識する樹状細胞と共培養してT細胞を強化する。 3. TIL療法強化におけるネオ抗原ペプチド樹状細胞ワクチンの機能解析 上記で予測されたネオ抗原ペプチドを自己PBMCから樹立した樹状細胞にパルスし、TILと共培養する。TILの強化の意義をElispot試験、細胞障害試験、マウス移植・治療実験を用いて解析する。ただし、マウスの実験は社会情勢を反映して供給が不足しており遅れる可能性がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。次年度は引き続き抗体などの研究用試薬、受託解析等に使用予定である。
|