研究課題/領域番号 |
21K19533
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
李 桃生 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50379997)
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研究分担者 |
後藤 信治 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (50186889)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 再生 / エピジェネティック制御 / ヒストン修飾 |
研究実績の概要 |
実験1、イモリ組織再生プロセスにおけるエピジェネティックな調節機構の役割を明らかにするため、尻尾切断後の断端局所組織細胞におけるヒストン修飾を調べた。本実験にはイベリアトゲイモリ(生後6-8ヶ月)を用いた。組織再生を誘発するために、尻尾を約1.5 cm切断した。切断の3日後には尻尾断端部組織を収集し、免疫組織化学染色解析に用いた。無傷の尻尾組織と比べ、切断した尻尾断端部組織には、c-kit陽性幹細胞とPCNA陽性増殖細胞の数が明らかに多く観察され(P <0.001)、ヒストン(H3K9、H3K14、H3K27)のアセチル化を示す細胞も有意に高値であった(P <0.001)。しかし、局所組織細胞におけるH3K27のメチル化では群間に有意差が認められなかった(P = 0.063)。以上のことから、エピジェネティックな調節はイモリ尻尾切断後の再生に深く関与していることを示唆した。その結果を纏めた論文は既に国際学術誌に掲載された。 実験2、マウスとイモリにおけるストレス応答機構、特にエピジェネティック制御関連因子発現変化の違いを比較するため、マウスとイモリから心臓組織を採集・細切し、それぞれ1%、20%、50%の酸素条件下で"explant"として培養を行った。培養24時間後には組織からRNA分離純化し、解析に用いた。現在、エピジェネティック制御関連因子の発現についてRT-qPCR定量解析を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尻尾の切離断端組織細胞にはヒストン修飾の変化が確認でき、組織再生におけるエピジェネティック制御関連機構の関与が示唆した。この結果は既に論文として国際学術誌に公表した。 また、マウスとイモリから心臓組織を採集し、異なる酸素条件下での組織培養も行い、RNA採取も終了した。現在、エピジェネティック制御関連因子の発現についてRT-qPCR解析は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
マウスとイモリにおける酸化ストレスに対する応答機構の違いを明らかにするため、以下のin vitroとin vivo実験を行う。 1、In vitro実験としては、マウスおよびイモリの心臓組織を採集・細切し、"Explant"としてそれぞれ1%、20%、100%酸素下で培養を行い、エピジェネティック制御関連因子発現の変化をRT-qPCRで調べる。 2、In vivo実験としては、マウスとイモリをそれぞれ8%、20%、80%の酸素条件下に於かれ、2時間後に心臓や肺臓などの組織を採集し、上記と同様にエピジェネティック制御関連因子発現の変化をRT-qPCRで測定する。また、心臓組織からmRNAを分離採集し、RNA-Seq解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に既存の試薬と抗体を用いることが可能だったため、次年度使用が生じた。 繰越金は次年度に実施するRNA-Seq解析費用に充てる。
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