研究課題
女性は、片頭痛、関節リウマチ、線維筋痛症などの強い痛みを伴う疾患の罹患率が男性よりも高い。また痛みに対する感受性には性差があることは明白であるが、これまで痛みの研究は主に雄マウスを用いて行われてきた。その結果、女性における痛み制御機構、慢性疼痛の分子基盤の理解は男性と比べて大きく遅れている。実臨床においても、痛みを伴う種々の疾患に性差があると認識されているものの、現状では性別に基づいた治療方法は全くない。また、行動実験や電気生理による解析を中心に行われてきた痛み研究において、分子・細胞レベルでの痛み制御機構の解明に向け新たな解析系の確立が不可欠である。本研究は、疼痛治療薬の研究開発において見過ごされてきた痛みの性差に着目し、アンドロゲン(男性ホルモン)依存性の新規疼痛制御メカニズムを解明することを目的としてる。グリア細胞特異的なアンドロゲンレセプター(AR)ノックアウトマウスを作製し、坐骨神経結紮による神経障害性疼痛モデルの解析から、アンドロゲンシグナルが疼痛制御に関わる可能性を見い出した。アンドロゲンの下流で機能する痛み制御因子を同定するため、マウス脊髄組織を用いてRNA-seq解析を行い、雄において痛みの発症に伴い発現が変化する因子を同定することができた。さらに効果的に目的因子を同定するためにマウス組織からグリア細胞を効率的に単離する方法を確立した。イメージング解析からは、痛みの発症に伴い変化するグリア細胞の新たな特徴的形態を見出した。
2: おおむね順調に進展している
これまでのアンドロゲン投与実験に加えて、アンドロゲンレセプター(AR)の遺伝子改変マウスの解析からもアンドロゲンが痛み制御に関与することを明らかにすることができた。イメージング解析から、痛みの性差の理解につながるグリア細胞の形態変化を捉えることができた。
雄において痛みの発症に伴い発現が変化する因子について、痛み制御における意義を細胞株等を用いた解析から明らかにする。マウス脊髄よりFACSによって単離したグリア細胞によるRNA-seq解析から、アンドロゲン依存性の痛み制御因子ならびに疼痛調節シグナル経路を同定する。
同定した因子の疼痛制御における意義をグリア細胞の細胞株を用いて検証する予定であったが、細胞株の選択及び入手に時間を要してしまい実施できなかった。グリア細胞活性化剤を用いて活性化後、候補因子を処理し、グリア細胞活性化に対する影響をリアルタイムPCR及び免疫化学染色により検証する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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