研究課題
重症の短腸症候群に対する唯一の根治療法となりうる小腸移植は,小腸の他の臓器に比して強い拒絶反応のため移植後の管理に難渋しており,実施例はごく少数に限られているのが現状である.十分な治療法がなく,予後不良である重症の短腸症候群に対する新規治療法開発へのニーズは大きい.本研究では,自己の小腸由来細胞を移植細胞として用いることによって,生涯の免疫抑制を要さない新規移植療法の開発を目指し,短腸症候群モデル動物における知見の創出とヒトへの応用へ向けた研究基盤の構築を目的とする.これまでに開発してきた致死的な短腸症候群モデルラットの切除する腸管長について,残存させる空腸または回腸の長さを変更し,より緩徐な体重減少を示すモデルへと変更した.これにより,長期の解析が可能となるとともに,比較的長期にわたる一定期間経過後に移植組織を得られる確率を高めることに成功し,効率的な解析基盤の構築へとつながっている.また,臨床においても用いられている経腸栄養剤を併用することで,禁食期間短縮により周術期の体重減少を予防することも可能となり,周術期管理の改善へとつながった.小動物レベルから大動物レベルへの移行に先立って,小動物レベルにおける移植先組織の移植前処置の条件検討をex vivo,in vivoで行った結果,組織障害を低減しつつ効率的な処置が可能となり,これまでよりも手術関連処置に伴う合併症リスクを低減するプロトコール策定へとつながっている。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症流行により,業者からの必要な資材の納期が遅れるトラブルがあったが,既に回収した検体の再解析や残余検体の効率的な利用により,おおむね順調に研究計画はすすめられているため.
動物モデルとin vitro培養系を用いて,相互にフィードバックをはかりながら研究を推進し,短腸症候群モデルからの知見創出と,細胞移植を大動物モデルへとスケールアップする上での課題の克服を目指す.
新型コロナウイルス感染症の流行による業者からの試薬などの納入遅延があり、既存サンプルや残余検体の有効活用により研究を推進した。結果として、研究の遅延なく翌年度に助成金の使用を持ち越すことが可能となった。当該助成金は、必須の試薬をはじめとする培養関連費用、動物購入費用、および、成果を公表関連費用などへと充当する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Gastroenterology
巻: 162 ページ: 334~337.e5
10.1053/j.gastro.2021.09.051
Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology
巻: 13 ページ: 195~197
10.1016/j.jcmgh.2021.06.027
巻: 13 ページ: 5
10.1016/j.jcmgh.2021.09.010
Stem Cells
巻: 40 ページ: 123~132
10.1093/stmcls/sxab020
消化器病学サイエンス
巻: 6 ページ: 49
再生医療
巻: 21 ページ: 38~41
PLOS Pathogens
巻: 17 ページ: e1009542
10.1371/journal.ppat.1009542
感染制御と予防衛生
巻: 5 ページ: 46~54
10.34449/J0108.05.02_0046-0054