免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療に強いインパクトを与えた。一方、単剤における治療効果はがんの種類により異なり、治療効果が得られるがん種(肺がん・胃がん等)と得られないがん種(大腸がん・膵臓がん等)が判明している。また治療効果が得られるがん種においても効果が得られる患者と得られない患者が存在する。申請者らはその原因の一つとして抗体医薬が認識できないPD-L1蛋白質の翻訳後修飾に着目した。翻訳後修飾で一番多いのが糖鎖修飾であり、PDL1分子における糖鎖修飾の重要性が報告されているが、がんの種類によるPD-L1上の糖鎖の違いや特定糖鎖については報告はない。糖鎖は遺伝子による直接制御を受けない「翻訳後修飾」であるため、PCR法による増幅やリコンビナント作成が難しく研究開発が遅れている。本研究では、レクチンアレイ法を用いて腫瘍組織におけるPD-L1上の糖鎖修飾について網羅的解析を行い、主要な糖鎖修飾の相違を明らかにすることを最終目的とする。本研究成果より、PD-L1上の糖鎖修飾が明らかとなれば、意図的に糖鎖修飾を標的とした治療薬開発が期待される。 本研究では、各がん種の腫瘍組織を使用し、レーザーマイクロダイゼクション(LMD)法を用いて腫瘍細胞を分離して、腫瘍細胞に発現するPD-L1上の糖鎖修飾を高密度レクチンアレイ法にて解析する。まず患者腫瘍組織(肺がん・胃がん・大腸がん・膵臓がん)を準備し、LMD法にて各がん種の腫瘍細胞を分離した。次に、分離した腫瘍細胞を抗PD-L1抗体を用いて免疫沈降し、PD-L1分子を単離した。単離したPD-L1分子を高密度レクチンアレイ法にて解析を行い、がん種により糖鎖を認識するレクチン構造が異なる事が判明した。腫瘍細胞株を使用した高密度レクチンアレイ解析も行い同様の結果が得られている。
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