我々は、中心性漿液性脈絡網膜症 (CSC)におけるモデル動物を構築するために、vasoactive intestinal peptide receptor (VIPR)2の機能に着目し、そのノックアウトマウスを樹立することに成功した。そして、野生型マウスとVIPR2ノックアウトマウスの網膜および脈絡膜を比較検討した。 まず両者の眼底観察により、VIPR-2ノックアウトマウスでは周辺部網膜に萎縮がみられるものが多かった。しかしながら、野生型にも一部には周辺部網膜に萎縮がみられる個体もおり、有意な差異とまでは言えなかった。 次に、光干渉断層計(OCT)を用いて、網膜および脈絡膜の形態学的な解析を行った。形態的には明らかな差異はみられず、網膜および脈絡膜の各層の厚みを定量するなどして解析を行ったが、これについても有意な差異を見出すことはできなかった。また、実験計画にあるようにストレス負荷についても検討したが、現在までに網脈絡膜に有意な差異が出現する条件を見出すことはできていない。 最後に網膜電図(ERG)を用いて、網膜の機能的解析を行った。これについては、VIPR2ノックアウトマウスにおいて、有意な応答増強がみられることを確認できた。本結果については再現性が得られており、VIPR-2という分子が網膜あるいは脈絡膜について何らかの機能的関与があることを示唆する結果が得られたと考えている。 以上、本研究により当初の目的であるCSCモデル動物の確立には至っていないが、VIPR2の網脈絡膜機能への関与について今後の新規発見につながる可能性があると考えている。
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