研究課題/領域番号 |
21K19547
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川瀬 哲明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (50169728)
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研究分担者 |
菅野 彰剛 東北大学, 医学系研究科, 講師 (20578968)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (60332524)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | saliency / 聴覚的注意 / 可塑性 |
研究実績の概要 |
多くの音情報が存在する実環境における聞き取りに必要不可欠な、選択的注意のメカニズムが働く背景には、ヒト側の“聞く”という随意的な要因の他“音 のsaliency(顕著性)=注意のひきつけ易さ”という音情報そのものが有する要因が重要となる。本研究では、"saliency" の病理という側面を有する耳鳴や音響過敏臨床への展開を視野に入れた「saliencyの可塑性に関与する内的・外的要因の解明」、並びに「介入によるsaliencyの低減、増強の誘導」に関する展開的挑戦を行う。 本年度は、主に、昨年度検討した評価方法の中で最も繰り返しの検査が行いやすい、心理音響学的評価法(片耳に提示した語音(単音節)に対する語音明瞭度を指標に、対側耳に提示した注意ひきつけ刺激音の注意ひきつけ効果評価)を用いて、繰り返し刺激による注意ひきつけ効果の変化(可塑的変化の有無)の観察を予備的行うとともに、繰り返しの計測評価に有用な他覚的指標の検討を行った。その結果、1)今回、考案し用いている心理音響学的手法は比較的安定した計測手法であること、2)音楽とノイズという限られた刺激条件での検討範囲ではあるが、短期間の繰り返し計測では、有意なSaliencyの変化は認められないこと、3)Saliencyの大きさ(注意ひきつけ音による注意のひきつけられ易さ)の個人差には、注意に関する内的要因の影響があること、4)繰り返しの計測評価に有用な"Saliency"の他覚的指標として、瞳孔径は瞬目の影響や検査時の光環境の安定性も問題もあり、繰り返しの計測が難しそうなこと、5)一方、瞬目回数を指標にした予備的検討では、安定した記録が容易に実現可能であったが、注意の影響については、さらに検討を重ねる必要があること、などが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Salicenyの評価方法がおおむね確立し、Saliencyの可塑的変化についても検討を開始することができている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本研究の最終年度であり、まず、1)これまで検討した中で、再現性と繰り返しの検査を行う観点からも最もSaliencyへの介入効果の評価に適していると思われる、心理音響学的評価法を用いて、内的要因、外的要因のSaliencyに与える影響、またその可塑性についての検討継続、並びに、結果の総括を行うとともに、2)心理音響現象の脳内メカニズムを明らかにする目的での脳磁図計測を用いた他覚的評価での補足的検討、3)瞬目記録を用いた注意状態の評価法の確立、並びに同法をもちいたSaliencyの評価、並びに、可塑的変化の評価に関する検討の継続並びに総括、を行い、4)研究全体の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、脳磁図機器使用料の支出を見込んでいたが、本年度の検討は、別実験終了後の余剰時間で実施できたため使用額に残額が生じた。 来年度に繰り越す使用額は、来年度の脳磁図使用料などに用いる予定。
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