研究課題/領域番号 |
21K19553
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池淵 祐樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20645725)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 骨代謝 / 細胞老化 / 細胞外膜小胞 |
研究実績の概要 |
骨細胞における細胞老化が骨代謝、特に破骨細胞形成に与える影響を評価するため、遺伝子改変マウスを用いた検討の準備を進めている。酸化ストレスの蓄積が骨細胞の細胞老化の促進に関わっている可能性を検証するため、SOD1を骨細胞特異的に発現させたTgマウスは、外部業者に作出を依頼しており、得られた後に解析に供する予定である。また、骨細胞選択的なSost遺伝子、および老化細胞選択的なp16遺伝子の下流でそれぞれCaspase8を発現させ、二量体を形成することで活性化させることが可能なdTgマウスに関しては、すでに作出を完了して繁殖・飼育を進めている。若齢・成体・老齢のマウスに関して、細胞老化の進んだ骨細胞を除去することで骨代謝にどのような影響が認められるか、大腿骨・脛骨や椎骨等の骨形体計測を中心に評価することを計画している。 また、in vivoでの評価と並行して、マウス骨細胞様IDG-SW3細胞を用いたin vitro解析を進めている。生体内の骨細胞は、周囲が3-4%程度の低酸素環境となっていることが示唆されていることから、専用の培養チャンバーを用いた低酸素培養による形質変化を検証している。低酸素培養を行なったIDG-SW3細胞では、細胞老化の選択的なマーカーとなるp16遺伝子の発現量、およびβ-galactosidaseの活性が抑えられており、ここに過酸化水素による酸化ストレスを負荷することで細胞老化が進むことを認めている。細胞老化の進んだIDG-SW3細胞は、RANKLの発現量が僅かながら上昇し、かつ膜小胞に搭載されて分泌されていることも確認しており、今後、さらにこの点の検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、概ね順調に進展している。 遺伝子改変マウスを用いた解析は、特に老齢マウス(24週齢以上)での解析は研究期間の後半になってしまうが、十分に実施可能である。培養細胞での解析も実験条件等はほぼ検証できており、今後の解析に大きな支障はない。
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今後の研究の推進方策 |
マウスを用いたin vivoでの検証を引き続き進める。Sost、およびp16-Caspase8のdTgマウスに関して、付与したDmrA/Cタグを介して薬剤投与による二量体形成を任意に促進させることが可能であり、それぞれの週齢における骨代謝への影響を評価する。老化骨細胞の除去から一定期間後にマウスを安楽死させ、摘出した大腿骨・脛骨・椎骨に関して、マイクロCTでの骨構造解析や組織標本での骨形体計測を行い、破骨細胞形成、骨形成など各種パラメーターを計測する。 また、IDG-SW3を用いたin vitro解析では、酸化ストレスを付与することで細胞老化が促進されることが認められていることから、その条件下でIDG-SW3から放出される細胞外膜小胞の解析を進める。RANKLの搭載量に関してはELISA法で詳細な解析を行い、また、同時に搭載されている分子プロファイルの変化に関してはショットガン・プロテオーム解析で網羅的に検出する。酸化ストレスに加えて、破骨細胞形成・骨代謝回転が促進される様な各種ストレス負荷によっても、骨細胞の細胞老化状態にどの様な影響が認められるかも検証を進める。培養に伴うシェアストレスや伸展刺激、あるいは性ホルモン分子によるバランスの変化などを中心に検討を予定している。 一連の解析を通して、骨細胞における細胞老化が、骨代謝回転の起点となる破骨細胞形成にどの様な影響を与えるのか、新たな知見が得られるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに研究を実施し、必要となる消耗品・試薬等の購入に研究費を使用している。次年度に持ち越しとなった研究費に関しても、全て研究期間内での使用を計画している。
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