研究課題/領域番号 |
21K19558
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
溝上 敦 金沢大学, 医学系, 教授 (50248580)
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研究分担者 |
泉 浩二 金沢大学, 附属病院, 講師 (80646787)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 肝転移 / 肝間質細胞 / 間葉上皮移行 |
研究実績の概要 |
強力な新世代AR標的薬(AR signaling targeted therapy: ARST)が開発され、ARシグナルを究極的に抑制できるようになった結果、ARシグナルが増殖に全く関与しないARST耐性前立腺癌(AR signaling-independent prostate cancer: ARIP)細胞が生命予後を規定する時代が到来しつつある。ARIPに特徴的な臨床像は肝転移である。ARSTやタキサン系抗癌剤の治療歴が増えれば増えるほど、肝転移の出現が増加する。この肝転移の出現を起点に、一気に病態の悪化を見ることが多い。原発巣から直接他臓器へ転移する以外に、骨転移巣で癌細胞が骨髄由来細胞から刺激を受け、その骨転移を起点に全身へ転移する経路が知られているが、我々は、肝転移微小環境にARIPへの変化を誘導するスイッチが存在する、という仮説を立てた。肝転移微小環境を想定し、肝実質において最も多く存在する細胞である肝間質細胞を想定し、ヒト肝間質細胞株Fa2N-4を用いる実験を行った。ヒト前立腺癌細胞LNCaPおよびC4-2BとFa2N-4の共培養では、癌細胞の増殖が促進されたが軽度であった一方、癌細胞の遊走は大きく促進された。興味深いことにFa2N-4のARをノックダウンさせるとこの遊走能は低下した。これを裏付けるように癌細胞のpSTAT3の活性化もFa2N-4のARをノックダウンさせたものと共培養したときには低下した。これはホルモン療法を行っていると癌細胞の転移能が亢進し肝まで達しやすいが、ひとたび肝に達すると、ホルモン療法下では遊走能が低下する、つまり間葉上皮移行を起こし、定着しやすくなる可能性を示唆しているのではないか考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年間の予定を100%とした場合、50%程度と考えられる。肝間質細胞が前立腺癌細胞に与える影響のうち表現型については明らかになったが、メカニズムはまだ明らかにされていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、肝間質細胞が前立腺癌細胞の遊走能をどのような機序で亢進させるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた抗体を購入していないため残額が生じている。共培養におけるケモカインアレイ等の費用に充当する。
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