研究実績の概要 |
先天性難聴は新生児1,000人に1人に認められる比較的頻度の高い疾患である。難聴患者の遺伝子解析を行い、原因遺伝子変異を明らかにすることは、原因診断として臨床上非常に有用であり、保険診療として一般的な検査となってきている。しかしながら、内耳は骨に囲まれた組織であり、生検が事実上不可能であるため、実際のヒト内耳における病理・病態に関してはほとんど明らかとなっていない。 本研究では、カリフォルニア 大学ロサンゼルス校(UCLA)耳鼻咽喉科の石山明教授との共同研究により、同大学の管理する世界最大の側頭骨病理標本アーカイブを活用し、ヒト側頭骨病理標本よりDNAを抽出し、次世代シークエンサー(NGS)を用いた解析を行い、原因遺伝子変異を明らかにすることで、遺伝性難聴の病理・ 病態を明らかにすることを目的に研究を行なった。 本年度は前年度までの研究を継続し、UCLAの管理する世界最大の側頭骨病理標本アーカイブからセロイジン包埋ヒト側頭骨病理標本を受領し、信州大学にて開発したセロイジン包埋ヒト側頭骨病理標本からDNA抽出するためのプロトコールを用いてDNA抽出をおこなった。具体的にはエタノール/ジエチルエーテル混和物で1週間程度溶解した後にエタノーエルで複数回洗浄しDNAを抽出するプロトコルを用いてDNAを抽出した。また、シトシン塩基の脱アミノ化によるウラシル塩基への変換が生じるため、ウラシルDNAグリコシラーゼ処理を行った。得られたDNAを基に次世代シークエ ンサー(NGS)解析用のライブラリの調整を行い、得られたライ ブラリを用いて次世代シークエンス解析を行った。その結果、複数の候補となるバリアントを検出することができた。現在、論文報告準備中である。
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