研究課題
(1)薬剤Xの濃度、分子量(分子量によって効果の違いが報告されている)、塩の違い(NaとCa)によるin vitroにおける破骨細胞分化抑制効果の違い:RAW264.7 (マウス腹水由来の単球マクロファージ)細胞株にいてRANKL刺激により破骨細胞分化実験系確立。分子量については低分子(4,500程度)と未分画(6,000-20,000)製剤を用い、未分画製剤については塩の違い(NaとCa)による効果の違いを評価し、分子量の違いおよび塩の違いで破骨細胞分化抑制効果の異なることを明らかにした。(2)Patient Derived Xenograft (PDX)モデルによるin vivo実験:近藤正先生(国立がん研究センター)は3種のヒト骨巨細胞腫株を樹立した。これらの細胞株を用いてマウスPDXモデルの作成は困難であるとの情報を得ているが、安定した単層培養系は確立されており、またspheroid形成は認められるため、薬剤Xの骨巨細胞腫単核細胞への影響を解析する実験計画を作成した。(3)特許出願:発明の名称を「破骨細胞増殖性疾患の予防又は治療剤」として特許出願申請済み(出願番号:2020-213717)。(4)薬剤Xによる臨床研究:薬剤Xが著効している患者Aに対して引き続き、投与継続し、薬効を確認している。また副作用の発現のないことを確認している。当院の先端医療・臨床研究支援センターと薬剤Xを用いての特定臨床研究の立案を進めている。
2: おおむね順調に進展している
安定した破骨細胞分化の実験系により、薬剤Xの有効な分子量、塩の種類、および薬剤の濃度を特定した。また特許申請を実施し、特定臨床研究の実施に向けて立案している。薬剤Xが著効している患者Aにおいては骨巨細胞腫病変の再発が認められた。しかし、病理学的所見を確認後、薬剤Xの投与頻度を元に戻したところ、病変のサイズアップは認められず、コントロールされている。また、重篤な有害事象は認められていない。
薬剤Xの有効な分子量、濃度、適切な塩を用いて、患者から樹立したヒト骨巨細胞腫株の単層培養系に対する影響を評価する。薬剤Xは破骨細胞分化の抑制効果を有するが、骨巨細胞腫単核細胞への影響は少ないと予想している。切除不能な骨巨細胞腫を有し、デノスマブを継続投与している経過中に顎骨壊死などの有害事象を生じ、デノスマブの投与を中止する必要がある患者に対して、薬剤Xを用いた特定臨床研究を実施する。患者著効例、破骨細胞分化に対する薬剤Xの効果を解析した結果については論文化して投稿、出版を予定している。
コロナの影響により納品が遅れたり、臨床研究への患者リクルート計画が予定通り実施できず、次年度使用となった。次年度使用が生じた未使用額は特定臨床研究立案にかかる経費、薬剤購入費、研究支援にかかる経費などが大きな金額になることが予想され、次年度に使用することを計画している。また患者から採取され、樹立した細胞株を用いた実験にかかる費用についても次年度の使用を予定している。研究結果の論文化にかかる英文校正費用、出版費用も次年度に予定している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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