研究課題/領域番号 |
21K19561
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西田 佳弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院教授 (50332698)
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研究分担者 |
小池 宏 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80846080)
伊藤 鑑 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (50880308) [辞退]
藤戸 健雄 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (70976357)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | 骨巨細胞腫 / 破骨細胞 / オフラベル / 薬剤開発 / 臨床試験 |
研究実績の概要 |
(1)薬剤Xの濃度、分子量、塩の違い(NaとCa)によるin vitroにおける破骨細胞分化抑制効果の違い:RAW264.7(マウス腹水由来の単球マクロファージ)細胞株を単層培養し、RANKL刺激により破骨細胞分化を評価できる。分子量については低分子(4,500程度)と未分画(6,000-20,000)製剤を用いた。未分画製剤については塩の違い(NaとCa)による効果の違いを評価した。令和4年度の実験の条件(試薬濃度、時間)を細分化し、より詳細な分子量の違いおよび塩の違いによる破骨細胞分化抑制効果を明らかにした。 (2)Patient Derived Xenograft (PDX)モデルによるin vivo実験:近藤正先生(国立がん研究センター)は3種のヒト骨巨細胞腫株を樹立した。これらの細胞株を用いた安定した単層培養系は確立されており、またspheroid形成は認められるため、薬剤Xの骨巨細胞腫単核細胞への影響を解析する実験計画を作成しているが、まだ実施にはいたっていない。 (3)特許出願:発明の名称を「破骨細胞増殖性疾患の予防又は治療剤」として特許出願申請済み(出願番号:2020-213717)。特許出願に基づいて、臨床開発に興味がある企業との交渉を行っている。 (4)薬剤Xによる臨床研究:薬剤Xが著効している骨巨細胞腫の患者Aは、骨巨細胞とは関連のない悪性腫瘍を発症し、抗癌剤治療を開始している。そのため、薬剤Xによる治療を中断し、骨巨細胞腫に薬効のあるデノスマブの使用を開始した。現在のところ、デノスマブは薬剤Xと同様に骨巨細胞腫の増大を抑制している。当院の先端医療・臨床研究支援センターと薬剤Xを用いての特定臨床研究の立案を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非臨床POCの実験において薬剤Xの効果を確認し、分子量の違い、塩の違い、濃度の違いによる薬効の差を確認している。したがって、臨床試験に移行する準備は整っていると考えられる。特許出願を終え、薬剤Xを販売している企業、あるいは新規開発に興味のある企業と順次面談を行い、共同研究開発の提案を行っている。しかし、薬剤Xの特許が切れているため、薬価が低く、現在のところ研究開発に興味を示す薬剤メーカーが出てきていない。 実臨床で薬剤Xを使用している骨巨細胞腫患者Aについては、薬効は継続して認められていた。骨巨細胞腫とは関連のない悪性腫瘍が発症したため、薬剤Xの投与を中止し、保険で承認されているデノスマブの投与を開始した。薬剤Xとデノスマブは同等の効果と考えられ、今後論文化を予定している。 薬剤Xを用いて、デノスマブでは副作用が出ている骨巨細胞腫患者を対象に医師主導の臨床研究を考えているが、特定臨床研究としての研究計画書作成が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤Xを使用し、著明な効果の認められている難治性骨巨細胞腫患者Aに関して英語論文を作成し、投稿予定である。In vitroにおいて薬剤Xの分子量、塩、濃度の差による破骨細胞分化抑制程度が異なる実験についても論文化を予定している。 切除不能な骨巨細胞腫を有し、デノスマブを継続投与している経過中に顎骨壊死などの有害事象を生じ、デノスマブの投与を中止する必要がある患者に対して、薬剤Xを用いた特定臨床研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により納品が遅れたり、臨床研究への患者リクルート計画が予定通り実施できず、次年度使用となった。次年度使用が生じた未使用額は特定臨床研究立案にかかる経費、薬剤購入費、研究支援にかかる経費などが大きな金額になることが予想され、次年度に使用することを計画している。また患者から採取され、樹立した細胞株を用いた実験にかかる費用についても次年度の使用を予定している。研究結果の論文化にかかる英文校正費用、出版費用も次年度に予定している。
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