研究課題
現在、腹膜播種に対する有効な治療法は確立されているとはいえず、比較的、腹膜播種の発生が多いとされる卵巣癌、大腸癌、および胃癌の腹膜進展に関する分子生物学的機序については未だ不明な点が多い。よい植物が育つにはよい“種”とよい“土壌”が必要であり、腹膜播種の克服には、癌(種)だけではなく腹膜微小環境(土壌)も一体化して考える必要がある。本研究では、「土壌」となる“腫瘍の手先”にさせられた本来生体防御的であった腹膜中皮{癌関連腹膜中皮細胞: Cancer-associated peritoneal mesothelial cell:(CAM)}により、よい「種」としての腹腔内微小環境ストレスに抵抗性を有する生存能力の高い卵巣癌細胞の成立過程を検証し、CAMがどのようなメカニズムで腫瘍細胞の休眠や進化を助け、既存の抗腫瘍薬からの攻撃回避に機能しているかを解明することを最大の研究目的とした。これまでの研究成果により、CAMに発現するNotchリガンドの一つであるDLL3を介して、一部の卵巣癌細胞にNotchシグナルが誘導され、Notch陽性となった卵巣癌細胞は、幹細胞形質を獲得し、細胞周期の遅延や低栄養耐性などの休眠様の状態を呈することを解明した。Notch陽性細胞はアミノ酸の代謝変容を引き起こし、プラチナ製剤などへのストレス抵抗性を獲得している機序を明らかにし、この機序を標的とした薬剤候補を同定し、その効果を各種実験モデルで実証した。これら一連の成果の論文投稿を行なっている。
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すべて 雑誌論文 (6件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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