研究課題/領域番号 |
21K19569
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮田 治彦 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (50604732)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 男性用避妊薬 / 精巣上体 |
研究実績の概要 |
精巣で作られたばかりの精子はそのままでは受精能を持たない。精子は精巣上体を頭部から尾部へ移行する過程で、精子の運動性や雌の生殖路移行能、卵子透明帯 (卵子の周りにある細胞外マトリックス) への結合能を獲得し、受精が可能となる (精子成熟過程)。約5週間かかる精巣での精子形成過程に比べて、精子成熟過程は約1週間と短期間で起こる。そのため、精巣上体における精子成熟過程は、短期間で効果があり、精子形成を阻害せずに精子機能を阻害する、男性用避妊薬の有望な標的である。 2021年度は、精子成熟過程に関与する分子を標的とし、様々な阻害剤を野生型のオスマウスに投与した。その結果、オスマウスの生殖能力が有意に低下する阻害剤を同定した。この阻害剤をマウスに投与したところ、投与開始後2週間で生殖能力が低下し、投与開始後3週間でオスマウスは不妊になった。体外受精を行ったところ、阻害剤を3週間投与したマウスの精子では卵子透明帯への結合能が失われていた。この結果は、阻害剤投与により精子成熟過程が阻害されていることを示唆している。また、阻害剤の投与を中止したところ、投与中止後2週間で生殖能力が一部回復し、投与中止後3週間で生殖能力が完全に回復した。 この阻害剤には副作用が存在するため男性用避妊薬として使用することは難しいが、阻害剤の標的分子が制御する経路が、短期間で効果があり可逆的な男性用避妊薬の標的となりうることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精巣上体での精子成熟過程を阻害する化合物を同定することができた。さらにこの化合物を投与したマウスを解析することにより、標的分子が制御する経路が男性用避妊薬の標的となりうることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
まずは同定した化合物を投与したマウスのさらなる解析を行う。特に分子レベルでの解析はまだ行っていないため、プロテアーゼを含む精子成熟過程に関わる分子の発現や翻訳後修飾状態を解析する。並行して精子成熟機構を阻害する新たな小分子化合物の探索を行う。特に、(1)今回同定した阻害剤の標的分子、(2)精巣上体で発現するプロテアーゼ、を標的とする阻害剤を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、一部の小分子化合物や消耗品の入手に遅延が生じた。2022年度にこれらの試薬を用いた実験を行う予定である。
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