研究課題
分泌型細胞外小胞(extracellular vesicle; EV)は近年注目されている新しい細胞間情報伝達システムである。呼吸器ウイルス感染症に対する治療・迅速診断法の発達に伴い早期の重症度予測法確立の必要性が高まる中で、非侵襲的でかつ凝縮された情報を生体から得るために呼吸器感染性ウイルス感染時におけるEVの解析を行い、EV中に含有される様々な内容物が重症度特異的なバイオマーカーとして汎用し得るかどうか検討を行うことを着想した。本研究は(1) 呼吸器ウイルス感染時に誘導される特異的EV内容物を同定し、(2) 同定産物が重症化バイオマーカーとなりうるか機能解析を行い、(3) 鼻汁から疾患重症度・予後を予測するEV内容物を迅速に診断する方法を構築することを目的とする。呼吸器感染性ウイルス感染時に誘導される特異的EV内容物を同定するための超免疫アフィニティ法について予備検討を行った。市販のキットではEV内容物のマーカーとして使用したCD9などがウエスタンブロット法で検出できなかったため、EVの濃縮や、精製方法についてさらなる検討を行った。初代培養小児咽頭扁桃上皮細胞にGFP-RSウイルスを感染させ、GFPの蛍光を指標に感染細胞と非感染細胞に分別し、RNAsequence解析を行った結果、感染細胞では分泌系タンパク質をコードする遺伝子や複数のmicroRNAを含むnon-codingRNAの発現上昇が見られた。さらにRSV-NS1に結合する宿主タンパク質の解析を免疫沈降法および質量分析法を用いて行ったところ、exosomeあるいはvesicle内に放出される可能性のある複数の宿主タンパク質と結合する可能性が示唆された。そこでRSV-NS1が細胞外に放出される可能性について今後も初代培養上皮細胞を用いて解析を継続する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Virological Methods
巻: 304 ページ: 114528~114528
10.1016/j.jviromet.2022.114528