研究課題
骨粗鬆症や関節リウマチなどの骨吸収性疾患は、運動機能を著しく低下させて、健康寿命を短縮する疾患である。そこで、骨形成を担い、骨組織再生に寄与する機能的な骨芽細胞を骨欠損部位に供給することが出来れば、失われた骨組織の再生を促進し、種々の骨吸収性疾患に対する効果的な治療法となり得る。これまでに我々は、骨再生治療の実用化と普及のためには、高い効果に加えて安全、安価な新技術が必要とされるといった観点から、ダイレクト・リプログラミングによる骨芽細胞誘導を行ってきた。そして世界に先駆けてヒトの線維芽細胞からのin vitro ダイレクト・リプログラミングによる機能的な骨芽細胞誘導を報告した。しかしながらこの方法では、細胞の採取と培養、高度な品質管理、細胞移植等、煩雑で長時間を要するプロセスと高いコストが必要とされる。そこで本研究では、骨芽細胞を生体内局所で直接誘導する技術(in situ ダイレクト・コンヴァージョン)を確立することを目的とした。すなわち、遺伝子導入ベクターを骨吸収病変局所に投与し、そこに存在する体細胞を直接、生体内局所で機能的な骨芽細胞に誘導し、骨組織を再生させるという手法である。本研究期間では、生体内で直接骨芽細胞を誘導するために必要となるベクターを作成するとともに、そのベクターを用いて種々の解析と検討を行った。その結果、骨芽細胞のin situ ダイレクト・コンヴァージョンを達成するための基盤となるデータを取得することが出来た。本研究の成果は、骨芽細胞の発生分化に伴うエピジェネティックなプログラミングと組織内微小環境シグナルとの相互作用に関する新知見をもたらし、また骨疾患に対する新しい再生医療モダリティを創出する可能性につながるであろう。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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