研究課題/領域番号 |
21K19584
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
秦 健一郎 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期病態研究部, 部長 (60360335)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / 網羅的エピゲノム解析 / ChILT法 |
研究実績の概要 |
様々な疾患で、エピゲノム異常と、その異常を標的とした病態解明や創薬が進められている。また、エピゲノムは生理的は発生や分化のカギを握る因子の一つであり、臓器の恒常性を保つのに必須の因子である。子宮内膜症は、異所性に存在しながらもがんとは異なり、元の臓器機能をきわめて正確に「記憶」し、ホルモン刺激に応じて増殖と破綻出血を繰り返す。このように、長期にわたり安定して異所性に機能を保つ病変部のエピゲノムは、病態解明に重要な知見をもたらすと期待される。一方で、子宮内膜病変部は通常小さく、10の7乗個レベルの病的細胞を精製分離回収するのは困難である。病変部の培養等も報告されているが、多くは子宮内膜間質細胞であり、子宮内膜腺上皮の研究報告は少ない。また、一般的に、培養等で増殖してしまうと、遺伝子発現状態のみならずエピゲノムも変化してしまうため、病変部の真の姿を解析することができない。申請者らはこれまで、効率的な子宮内膜間質細胞や腺上皮の精製分離方法を発表し、また、正常子宮内膜間質細胞の網羅的エピゲノム解析(ヒストン修飾、DNAメチル化)の成果を発表してきた。これらの実績と技術を発展させ、子宮内膜病変部の少数細胞を用いた解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、10例以上の子宮内膜症検体を収集する予定であったが、COVID-19対応のため手術室・病棟への研究者の出入りが困難となり、2例の回収にとどまったが、間質細胞と腺細胞を100個~数千個程度精製回収することには成功した。また、新規症例の収集が困難であったため、既存検体を用いた少数細胞解析の条件検討を行った。ChILT法を用いてエピゲノム解析(H3K27ac,H3K27me3,DNAメチル化)とトランスクリプトーム解析を行い、コントロールとして培養増幅させた子宮内膜間質細胞100万個程度で行った通常のChIP-Seq解析結果との比較を行い、手技特異的なデータの偏りの有無の検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、当初の予定通り網羅的エピゲノム解析を進め子宮内膜症病変部で特異的なエピゲノム修飾を受けている領域を同定し、当該領域内の遺伝子発現変化を、実際の子宮内膜症サンプルと正所性子宮内膜(正常組織)で比較する。また、これらの解析で同定された候補遺伝子の機能解析を行なうために、我々の論文発表済みの子宮内膜間質細胞のin vitro脱落膜分化モデルを用いて、RNAiによる候補遺伝子のノックダウンを行い、細胞機能・子宮内膜分化状態への影響を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19への対応に伴い、手術室・病棟への研究者の立ち入りが困難であったため、本年度は10例を予定していた症例収集が2例にとどまり、主にシークエンス代金が生じなかったため、250万円中200万円が未執行であるが、本年度検体収集のめどは立っており、シークエンスは業務委託で行い研究代表者の負担は増えないため、当初の予定通りに解析を進める。また、研究代表者は令和4年4月より異動したが、実験の大半は元の研究施設で行う必要があるため、当初予定していなかった交通費が生じる。
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