研究課題/領域番号 |
21K19594
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 隆史 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (50367520)
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研究分担者 |
豊田 博紀 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (00432451)
片桐 綾乃 大阪大学, 大学院歯学研究科, 講師 (40731899)
田熊 一敞 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (90289025)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 咀嚼 / 発達 / 筋電図 / 吸啜 |
研究実績の概要 |
幼若仔ラットに対し咬筋・側頭筋に筋電図記用電極を埋入する手術を施し、離乳期前から7週齢までの長期間にわたって、離乳前の吸啜、パスタの齧り取り、ペレットの咀嚼、ミルクのリッキングにおける筋活動を、同一個体において縦断的に記録した。吸啜時の筋活動リズムは、離乳後の摂食行動のリズムより有意に遅かった。また、吸啜時の筋活動の協調性は、齧り取り、咀嚼、Lickingと異なっていた。離乳後、齧り取りと咀嚼のリズムは漸増したが、リッキングのリズムは変化がなかった。また、筋活動の協調性は、齧り取りでは変化がないが、咀嚼では離乳直後の短期間に変化した。リッキングでは咬筋と側頭筋活動の協調性が5週齢で大きく変化した。以上から、離乳前に特徴的な咀嚼筋活動を示す摂食運動が発現し、離乳後はそれぞれの運動の発達動態が異なる可能性が示された。さらに、ゴルジ染色やパッチクランプ記録を行い、口腔顔面領域を支配する大脳皮質体性感覚野のニューロンにおけるシナプス発達や機能に対する間歇的低酸素負荷の影響を検討した。ゴルジ染色の結果、間歇的低酸素負荷直後(21日齢)のニューロンでは、コントロールに比べ、一次突起数、総突起長およびスパイン数に変化が認められた。間歇的低酸素負荷2週間後(35日齢)のニューロンにおいても、スパイン数に変化が認められる傾向にあった。パッチクランプ記録では、、間歇的低酸素負荷直後および2週間後では、微小性興奮性シナプス後電流の頻度および振幅が減少していたが、微小性抑制性シナプス後電流では変化は認められなかった。また、間歇的低酸素負荷直後および2週間後では、刺激誘発性興奮性シナプス後電流の振幅が減少し、シナプス長期増強が減弱していた。これらの結果から、間歇的低酸素負荷直後および2週間後のニューロンでは、シナプス形成異常にともなうシナプス伝達効率の可塑的変化が起こる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
幼若仔ラットに対して長期間にわたって記録したデータを取得し、行動学的特徴や咀嚼筋電図活動の経日的変化について、論文化することができたことはよかった。しかし、咀嚼筋筋電図活動を解析するにあたって、筋活動電位の活動上昇点を決定する方法の確立や、その後の筋活動バーストの様々な特性を解析する方法を確立するのに、当初想定していたよりも遅れている。また、口腔機能低下モデルにおいて、咀嚼筋活動の中枢調節機構を解析するために必要な経日的変化のデータの蓄積に時間を要している。さらに、大脳皮質体性感覚野のニューロンに対する間歇的低酸素負荷の影響を検討するうえで、ゴルジ染色を用いた実験においていくつか当初の予定より遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
口腔機能低下モデルにおいて、経日的に飼料咀嚼時の行動特性や咀嚼筋活動の変化を記録する実験を進め、そのデータを定量的に解析し、中枢調節機構の特性を明らかにできるようにする。さらに、大脳皮質体性感覚野のニューロンに対する間歇的低酸素負荷の影響については実験を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
成長発達に伴う経日的な咀嚼筋活動の変化を記録する実験ができたが、当初の想定よりもそのデータ解析に時間を要したため、口腔機能発達の低下をさせた動物におけるデータ収集実験に遅れが生じたことから、次年度使用額が生じた。次年度は、これらの実験を遂行する。
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