研究課題/領域番号 |
21K19603
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90221936)
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研究分担者 |
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (30322233)
服部 高子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (00228488)
高江洲 かずみ (河田かずみ) 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10457228)
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10432650)
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (20112063)
大野 充昭 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (60613156)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | reprogramming / iPS cell / chondrocyte / transcription factor / lncRNA |
研究実績の概要 |
初年度である本年度は、本研究で提唱する「インバース・ジェネティクス方法論」を、軟骨細胞を用いて検証することを第一の目的と定め研究を進めた。当初の予定ではマウス肋軟骨細胞を用いる予定であったが、長鎖非コードRNA (lncRNA) 遺伝子の数がはるかに多いこと、およびフィーダー細胞としてマウス由来SNL細胞を使うことを考慮しヒト軟骨細胞を用いた検討から開始することとした。理論上は可能だが軟骨細胞からiPS細胞を作成できたという報告はまだない。したがってまず山中4因子 (OSKM) を強制発現するレンチウイルスベクターを作成し、ヒト軟骨細胞に導入、リプログラミングが起こるかどうかをコロニー形成を指標に検討した。その結果OSKM導入発現2週間後には多数のコロニーの形成が見られ、軟骨細胞もiPS細胞化しうることが確認された。この結果を受けて、iPS干渉法によって仮説の妥当性とSOX9遺伝子の軟骨細胞分化の機能確認に進んだ。すなわち軟骨細胞にOSKMに加えてSOX9を発現させることでリプログラミングが阻止されるかを検証した。その結果SOX9発現によって形成されるコロニーは減少したがゼロにはならなかった。これはSOX9が単独で軟骨細胞分化を決定しているのではないためと考えている。そして次にシングルセル解析に進むにあたっては、解析前にフィーダー細胞を除去する必要がある。そのため以上の研究に並行して、蛍光色素mCherryを発現するSNL細胞を新たに樹立し、フローサイトメトリーで除去するシステムを整えてきた。ここまでは順調であったが、この実験システムではリプログラミング効率が十分ではなく、シングルセル解析で有意な結果を得るために必要なOSKM導入細胞数の確保が難しいことが分かってきた。そこで最近開発された一体型山中因子発現ウイルスベクターを試したところ、予備実験で飛躍的に高い導入効率が得られた。来年度はこのシステムを用いて研究を先に進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度半ばまでは予定を超えるスピードで研究が進み、シングルセル解析用試薬も早々に揃えていたが、従前の実験システムの稼働効率に問題が生じたため、年度内にシングルセル解析まで進めなかった。この点は研究にやや遅れを生じていると評価せざるを得ない。しかしこれに並行してフィーダー細胞を除去する方法を考案、準備をするなど必要な軌道修正を行うとともに、新たな遺伝子導入システムの導入とその有効性を実験的に確認するなど、今後の研究を加速させるための成果も得ることができた。したがって結果的には、次年度の研究を急速に進めるための基盤が整備され、研究期間が終了する頃までには本研究課題が目指すゴールに到達できる見込みがついたため、上記のような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
新たに導入したリプログラミング用遺伝子発現ベクターは、センダイウイルスをベースとした最新のテクノロジーに基づくもので、非常に高い効率で導入細胞を得ることができる。リプログラミングは本研究課題の基幹をなすプロセスなので、今後はこのシステムを活用することで一層の推進が図れる。さらに、本研究課題の次に行うべき研究として位置付けていた、インバース・ジェネティクスによる歯原性細胞分化を支配するマスター遺伝子の探索に取り組もうとする人材が、本研究チームに集結しつつある。研究期間中に本研究課題のゴールを超えて次の段階に進めることを目指し研究に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施予定であったシングルセル解析を行わなかったため、残余が生じた。当該部分は同じ目的で次年度に使用する。
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