研究課題/領域番号 |
21K19604
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
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研究分担者 |
仲 周平 岡山大学, 大学病院, 講師 (10589774)
高木 章乃夫 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80359885)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / Streptococcus mutans / モデルマウス |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD) は,病態の進行が稀な単純性脂肪肝 (NAFL) と肝硬変や肝細胞癌へ進行することがある非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) に分類される。本研究では、NASHモデルマウスを用いて、Cnm および PA 陽性 S. mutans による病態進行への関与を検討したので報告する。 NASH 患者の唾液中から分離したCnm および PA 陽性 S. mutans KT3 株と、感染性心内膜炎患者からの血液分離株である TW871 (Cnm 陽性, PA 陽性) 株を用いて NASH モデルマウスにおける検討を行った。C57BL/6J マウス (6 週齢オス) に 4 週間高脂肪食を摂取させ、頸静脈より各菌投与群と菌非投与群に分け、高脂肪食の摂取を続けた。菌投与 12 週後に 3 群における体重の測定を行った後、屠殺した後、肝臓および内臓脂肪を摘出し、 重量を測定した。また、Hematoxylin-Eosin (HE) 染色および Masson’s-trichrome(MT)染色により,マウス肝臓組織の変化を分析した。各群における体重および内臓脂肪重量に有意な差は認められなかった。一方で, KT3 株投与群から摘出した肝臓は、非投与群の肝臓と比較して肥大しており,肝臓重量は有意に高い値を示した。 また, 肝臓組織の HE 染色像では,肝実質における顕著な脂肪の蓄積を認め、KT3および TW871 投与群の HE 染色像では、 炎症性細胞の浸潤が認められた。さらに、MT 染色では、顕著な肝実質および血管周囲に明確な線維化像を認めた。本研究の結果から、動物モデルにおいて、NASH 患者より分離したCnm および PA を保有する S. mutans が血液中に侵入すると、 NASH の病変に類似する病態が生じることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
他の疾患から分離された菌を用いてモデルマウス実験を行うことによって、NASH患者から分離された菌で特異的にNASHを発症することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに病態発症メカニズムについて検討を行う予定である。 1) 肝臓組織への菌の結合メカニズムを検討 2) 病態発症における菌の表層構造および生物学的特性の解析
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次年度使用額が生じた理由 |
健康なマウスと疾患モデルマウスの肝臓サンプルからRNAを抽出し、RNAシーケンシングによる網羅的解析を行い、発現が異なる遺伝子あるいは炎症マーカーを抽出し、疾患との関連性について評価する予定であったが、今年度は組織学的評価および生化学的評価のみにとどまった。サンプルは採取できているため、次年度に行う予定である。
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