研究課題/領域番号 |
21K19610
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉崎 恵悟 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10507982)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 上皮細胞 / 極性 / 分化 |
研究実績の概要 |
歯原性上皮細胞は歯の表面を覆うエナメル質を産生する細胞として知られているが、増殖期から分化期、分泌期を経て退縮期にいたるまで、その形態を大きく変化させる細胞であり、細胞極性化の解析モデルとして最適なツールであると考えられる。 これまでの歯をモデルとした頂底極性決定機構の解明を目指した研究により、極性決定に重要と思われる候補遺伝子の同定に成功した。さらに、これまでに樹立した歯原性上皮細胞株を用いることで、歯原性上皮細胞の多層化をin vitroで再現し、候補遺伝子による極性化決定メカニズムの同定を可能とする細胞培養モデルの構築を図った。遺伝子改変技術(CRISPR/Cas9)を用いて、候補遺伝子のN末端にGFP遺伝子をノックインすることに成功し、候補遺伝子を恒常的に可視化できるモデルを作製した。さらに、CRISPR/Cas9システムを用いた、本遺伝子欠損細胞株の作成に成功した。同細胞を用いたin vitro解析にて、多層化の影響を検討したところ、共焦点レーザー顕微鏡を用いた三次元解析において、多層化が生じる条件を同定することに成功した。多層化した本遺伝子発現細胞は、エナメル芽細胞分化マーカーであるAmbnを発現していた。さらに、候補遺伝子は核内において転写調節因子として働く可能性を発見した。そこで、ChIp-seq法を用いて標的遺伝子のプロモーター領域を網羅的に解析をするため、chromatin immunoprecipitationの条件設定を行った。本成果は、これまで明らかにされていなかった細胞極性化に伴う分化制御機構の解明への一助になる可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に、頂底極性を制御する分子の同定および極性化を可視化するin vitro解析法の開発に成功した。本解析手法を用いて、極性がもたらす分化制御機構の解明が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
PKP1によるepithelial extrusionの分子メカニズムの解明およびZO-1の局在制御を介した頂底極性決定機構を解明する。さらに、エナメル芽細胞は分化期に基底膜が消失し、頂底極性を獲得することから、基底膜刺激が頂底極性形成に関与している可能性が示唆される。そこで、これまで同定した基底膜分子を応用した3次元培養法を用いて、頂底極性制御モデルを構築し、PKP1による頂底 極性制御機構を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
極性化に関わる因子のスクリーニングが網羅的解析を経ずにある程度完了したため、その分の経費が節約できた。さらに、コロナ下で学会がweb開催が主であったため、旅費が不必要であった。次年度以降に新たにChIP-seqなどの網羅的解析を計画しており、生じた次年度使用額は、この解析経費に当てる予定である。
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