研究課題
研究代表者らはマウス胚性幹細胞(ES細胞)から中胚葉細胞を誘導し、続いてヘッジホッグシグナル活性化剤SAGとへリオキサンチン類縁体(TH)存在下で培養することで、骨芽細胞分化を誘導する培養系を開発していた(Kanke K et al. Stem Cell Reports, 2014)。そこで、本誘導系において、TH刺激前後のマイクロアレイデータを解析した。TH刺激で発現が変動する遺伝子を同定し、その情報をもとに、シグナル経路・蛋白質間相互作用を予測するため、約50種のキナーゼに焦点を絞った。続いて、標的分子予測として、標的分子が明らかな分子の構造やpharmacophoreとの類似性に基づいてTHの標的分子を予測した。構造類似性ではSimilarity ensemble approach(SEA)を、ファーマコフォア類似性ではPharmMapperを用いた。その結果、SEAでは約40種、PharmMapperでは約20種の候補を取得した。これらのリストを統合し、キナーゼに焦点をあててTHの標的分子候補の絞り込みを行った。絞り込まれたキナーゼについて、THの阻害作用をインビトロキナーゼアッセイにより検証した。その結果、5つのキナーゼについてはTHによる75%以上の活性阻害を認め、その効果はTHの濃度依存性であった。このうちの1つのキナーゼ(キナーゼX)については、ドッキングシミュレーションを行った。その結果、既存のキナーゼX阻害剤6種と同じ部位を標的とすることで、THの阻害作用が発揮されることが予測された。THの生物学的機能を検証するため、in vitro幹細胞特性維持作用について検討を行った。その結果、TH単独あるいは他のキナーゼ阻害剤との併用においても幹細胞特性維持作用を示さないことが明らかとなった。現在、THの骨代謝改善・骨折治癒促進効果の検討が進行中である。
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Regenerative Therapy
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