研究課題
2023年度は、Phox2b陽性ニューロンに蛍光タンパク質EYFPが発現する遺伝子改変ラット(Phox2b-EYFPラット)の脳幹スライス標本を用い、Phox2b陽性ニューロンの電気生理学的性質とその生後変化が唾液分泌と関連があるかどうかを探った。生後2~5日齢、9~12日齢、14~18日齢のPhox2b-EYFPラットから脳幹スライス標本を作成し、Phox2b陽性ニューロンから膜電位測定を行った。その結果、活動電位の発生頻度が生後2~5日齢よりも14~18日齢で増加することが示されたが、生後発達期を通して電流オフ後も発火を続けるようなbi-stabilityの性質はみられなかった。これらの結果が唾液分泌との関連を示唆するものかどうかは明らかにされなかった。また、Phox2b陽性ニューロンに光感受性タンパク質ChRFRが発現する遺伝子改変ラット(Phox2b-ChRFRラット)を用い、唾液分泌と全身麻酔薬の種類との関連性についても検討した。Phox2b-ChRFRラット(200-250 g)を以下の全身麻酔薬を用いて麻酔した。①ウレタン(500 mg/kg)、②ペントバルビタール(33 mg/kg)、③3種混合麻酔薬(ドミトール(0.375 mg/kg)、ミダゾラム(2 mg/kg)、ベトルファール(2.5 mg/kg))。顎下腺の排出導管にポリエチレンチューブを挿入し、チューブの他端を圧力トランスデューサーに接続し、唾液分泌圧を測定した。その結果、どの麻酔薬を用いた場合でも、光刺激により唾液分泌は誘発されなかった。さらに、クエン酸(0.3 M)を舌背中央部に0.1ml滴下した場合でも麻酔下では唾液分泌はみられず、麻酔が浅くなり覚醒に近い状態になってはじめて唾液分泌がみられた。以上の結果から、上記全身麻酔薬は唾液分泌を著しく抑制することが示された。
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Cell Rep Med
巻: 4 ページ: 101208
10.1016/j.xcrm.2023.101208