研究課題
癌の早期発見を可能とする安全、簡便、経済的かつ高感度な診断法・検出法の開発が望まれている。現在、癌の診断に用いられている細胞診断は患者の身体的負担が少なく、手技も比較的簡便であるが、いずれも細胞の形態的特徴と染色態度を基準として診断する方法であり、異常細胞における細胞内代謝変化などの機能面の評価を診断のために利用しようとする試みは未だなされていない。これまでにわれわれは、細胞の機能異常を早期に捉えることを目的に、口腔癌に対する5-ALAを用いた光線力学的診断 (ALA-PDD)の可能性につき検討を行い、簡便かつ安全で、患者負担の少ない新たな口腔癌診断法を開発し、学会等で広く報告してきている。そこで本研究では、このALA-PDDの原理を細胞診にも応用できる点に着目し、5-ALAを用いた新たな細胞診 (ALA-Cytology)を確立できる可能性について検証することを目的とした。 昨年度までに、口腔癌細胞およびその他の各種癌細胞、さらにそれぞれの発生組織に由来する正常細胞を用いて細胞の赤色蛍光を観察し、腫瘍細胞と正常細胞間での蛍光強度差、また癌細胞の種類や細胞生物学的特徴(悪性度や分化度)による蛍光強度差について検討し、最も蛍光強度差の得られる処理条件の特定を各細胞毎に行った。今年度は口腔癌(あるいは上皮性異形成)を疑う口腔粘膜病変を有する患者を対象として、われわれがすでに臨床応用しているALA-PDD(前述)を施行し、赤色蛍光が認められた部位に対して細胞診を実施し、症例において施行されたALA-cytology(Papanicolaou染色+5-ALAによる蛍光細胞診断)の診断結果と生検材料から得られた病理組織学的診断結果を比較した。
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