研究課題/領域番号 |
21K19621
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
佐々木 誠 岩手大学, 理工学部, 准教授 (80404119)
|
研究分担者 |
玉田 泰嗣 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (50633145)
土井 めぐみ 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (50899044)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 摂食嚥下 / 不顕性誤嚥 / マルチモーダル生体信号計測 / AI / 機械学習 |
研究実績の概要 |
不顕性誤嚥は,ムセや自覚症状がなく,静かに肺炎を発症・進行させるため,医療従事者や介護者であってもその兆候や変化を捉えることは難しい.そこで,本研究では,睡眠時マルチモーダル生体信号と覚醒時基礎データからの不顕性誤嚥の検出可能性について研究した. まず,睡眠データを簡便に計測できるよう,嚥下検出用の小型マイクロフォン,筋電センサ,伸縮性ひずみセンサ,呼吸検出用のPVDFセンサ,睡眠検出用の脳波センサ,ならびに,その他バイタルデータ計測用の血圧センサとSpO2センサ等を組み合わせたマルチモーダル生体信号計測システムを製作した.信号計測,解析,結果表示までの一連の処理を行うソフトウェア開発には,数値計算ソフトMATLABを用いた. 嚥下障害者を対象としたデータ収集・解析は,覚醒時と睡眠時の2段階で実施した.覚醒時のデータ解析では,嚥下開始から終了までの一連の前頸部表面筋電位信号から,舌による食塊の咽頭への送り込みや,嚥下反射における舌骨挙上,気道閉鎖等の各イベントを検出でき,嚥下諸器官の運動状態等を分類できることを明らかにした.一方,呼吸検出用のPVDFセンサは,嚥下時に様々な波形変化を示すことから,嚥下性無呼吸区間の特定や,その前後の呼吸相の特定が困難になる場合があった.そこで,PVDFセンサに加え,喉頭センサの情報を用いた嚥下と呼吸の協調パターン解析アルゴリズムを考案(特許出願)し,マスク型呼吸流量センサと計測精度を比較することで,その有効性を検証した.さらに,嚥下前後における呼吸パターンの変化から,誤嚥リスクを評価できる可能性を見出した.睡眠時のデータ解析では,不顕性誤嚥が認められる嚥下障害者や健常者のマルチモーダル生体信号を計測し,唾液誤嚥やその前後の呼吸変化,ならびに,深層学習による不顕性誤嚥群の分類可能性を検証することで,新たな見守り技術に対する基礎的な知見を得た.
|