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2021 年度 実施状況報告書

数理科学と医療管理学を融合した新興感染症の推計モデルと医療資源配分手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K19629
研究機関千葉大学

研究代表者

佐藤 大介  千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10646996)

研究分担者 中岡 慎治  北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (30512040)
川上 英良  千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (30725338)
吉村 健佑  千葉大学, 医学部附属病院, 特任教授 (60801735)
藤田 卓仙  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (80627646)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード新型コロナウイルス感染症 / 感染症疫学モデル / 医療経済評価 / 数理科学 / ELSI
研究実績の概要

本研究は数理科学に基づくモデルを用いて新型コロナウイルス感染症の陽性者数および入院患者数等を推計し、公衆衛生学的介入やワクチン等による感染拡大防止政策が、どの対象や範囲に介入すれば最も効果的かつ医療需要に対する最適な医療資源を配置可能かを推計する数理モデルに基づく医療経済評価の手法を開発することである。
新型コロナウイルス感染症の陽性者数および入院患者数の把握は、感染拡大による急激な感染者増と都道府県および保健所設置市の人員不足や検査体制、情報収集方法の技術的課題等に加え、保健所が入力したデータは国の管理下に置かれ、入力した自治体が使用することが出来ず、研究利用として個票単位でのデータ収集が困難であった。そのため本研究では特定の都道府県に限定し、報道発表を通じて公表されている個票データを日別に集計することで、モデル分析に必要なデータを収集した。第6波以降はさらなる感染者数の増加により、公表資料においても集計値のみとされ個票でのデータ収集が不可能となった。これらの代替手法により、本年度においては第1波から第5波までの個票データをデータセットとして整理した。
いっぽうで、新型コロナウイルス感染症の陽性者等に関する情報の取り扱いに関する法的・倫理的課題(ELSI)については、特にIT技術を利用した感染症対策のELSI上の問題点についての課題を整理した。特にワクチン及び治療薬が存在しない段階の非製薬的介入(Nonpharmaceutical Interventions; NPIs)にIT技術を利活用する分類について、①隔離(措置入院、自宅療養、隔離)、②検疫(待機要請、停留)、③行動制限(緊急事態宣言、蔓延防止重点措置)、④リスク広報(政府公報)、⑤個人的防御(うがい、手洗い、マスク)の5類型を列挙し、公衆衛生上必要な個人情報を収集する場合の法的・倫理的課題を整理した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は新型コロナウイルス感染症の陽性者数および入院患者数等を推計し、公衆衛生学的介入やワクチン等による感染拡大防止政策が、どの対象や範囲に介入すれば最も効果的かつ医療需要に対する最適な医療資源を配置可能かを推計する手法を開発することである。
しかしながら研究実施当初の想定以上に感染者数が増加した。このことにより都道府県および保健所機能がひっ迫し、保健所が入力したデータは国の管理下に置かれ、研究利用として個票単位でのデータ収集が困難となった。さらには入院患者数が確保病床数を超過し、自宅療養患者が急増した。これにより潜在的に存在する入院需要を把握することが困難となった。
また、厚生労働省が導入した「新型コロナウイルス接触確認アプリ」 (以下「COCOA」という。)は、携帯端末間のデータ交換により感染経路となりうる接触を記録し、後日、陽性者が判明した際に接触記録をユーザーに通知する携帯アプリであるが、令和3年2月、接触判定が実質上機能していない不具合が判明した。不具合の原因として実機テストの不実施、バグ報告の放置等の原因を特定し、再発防止策が提言されているが、COCOAの介入による感染拡大防止の効果の検証が難しくなった。第6波以降はオミクロン株の出現により、感染者数よりも医療需要や社会経済活動に重点が置かれる等、感染症疫学モデルの役割は変化しつつある。
そこで、研究計画を修正し、本研究では報道発表を通じて公表されている個票データを日別に集計することで、モデル分析に必要なデータを収集した。本年度においては第1波から始まり第5波までの個票データをデータセットとして整理した。また、COCOAの不具合を契機に、公衆衛生上必要な個人情報の収集に伴う法的・倫理的課題を研究した。
このような社会背景に伴う研究計画の修正はありながら、研究は進展している。

今後の研究の推進方策

IT技術を利用した感染症対策のELSI上の問題点については、情報収集手段ごとに技術的論点、法制面での論点、倫理に関わる論点を整理する。たとえば技術的論点では、位置情報の粒度、提供形式、費用負担、保健所側との接続方法、法制面での論点では、位置情報収集の法的位置づけ、患者位置情報の受け渡し手順、国民の理解を得る方策、倫理に関わる論点では、接触可能性通知サービスの倫理的許容等について検討を進める。
感染症疫学モデルについては、第1波から第5波までの陽性者情報に加え、千葉県の急性期病院42施設から収集した診療情報および請求情報を含む大規模管理データ(DPCデータ)を研究利用することについて研究倫理審査申請を行い、感染症疫学モデルを用いて入院医療の需要を推計するモデルを進める。すでにDPCデータのデータベース構築は完了しており、発症から軽症・中等症・重症・死亡の判別ロジックは作成済である。DPCデータと陽性者の個人情報は連結不可能であることから、感染症疫学モデルにおけるパラメーターとしてそれぞれ独立して用いることとする。

次年度使用額が生じた理由

本研究は研究計画時における新型コロナウイルス感染症の陽性者数および入院患者数が想定上に全世界的に拡大したことにより、想定外の事態が生じた。新型コロナウイルス感染症の陽性者数および入院患者数の把握は、感染拡大による急激な感染者増と都道府県および保健所設置市の人員不足や検査体制、情報収集方法の技術的不備が明らかとなった。国の方針により、保健所が入力したデータは国の管理下に置かれ、入力した自治体が使用することが出来ず、研究利用として個票単位でのデータ収集が困難であった。
そのため当初予定していた都道府県へのデータ収集協力に係る人件費および旅費が生じない結果となった。加えて先行研究を収集するために予定していた関連学会はすべてオンライン開催もしくは中止となり、関連する旅費が生じなかった。
このような研究計画の修正により、新型コロナウイルス感染症の陽性者数については報道発表を通じて公表されているデータを入力することで代替し、入院医療の需要を把握するために用いる大規模診療情報データおよび請求情報については、既存のデータベースを利活用することで対応することとした。
このような研究計画の修正に伴う使用額の変更が生じたが、研究自体に支障はない。

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公開日: 2022-12-28  

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