研究課題/領域番号 |
21K19631
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉村 典子 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (60240355)
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研究分担者 |
岡 敬之 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60401064)
飯高 世子 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80800680)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 運動器疾患 / 男性のライフステージ / 地域住民コホート / 要介護予防 / 検診プログラム |
研究実績の概要 |
要介護の原因の上位疾患である運動器疾患(サルコペニア:SP、骨粗鬆症:OP、変形性関節症:OA)には性差があるが、男性に焦点を当てた研究は少なく、実態は未解明である。申請者らは、2005年地域住民コホート(ROADスタディ)を構築し、過去5回13年にわたる調査を実施した。本研究では蓄積した検診結果をデータリンケージし、男性運動器疾患の発生率、危険因子を解明し、予後への影響を明らかにすることを目的としていいる。得られたエビデンスを元に、ライフステージ(中壮年期、熟年期、老年期)からみた男性の運動器疾患予防検診プログラムを開発し、17年目のROADスタディ第6回調査に応用し、効率的なスクリーニング方法を確立することを最終目標とする。 令和3年度は、地域住民コホートROAD (男性1,061人が参加)の13年目の追跡調査結果を入力整理し、ROAD第5回13年目の男性解析用データセットを完成した。このデータセットから、男性の骨粗鬆症有病率は、腰椎L2-L4の測定においてベースライン調査時(2005-7)では3.3%であったが、10年後の第4回調査では1.4%と有意に低下していることを明らかにした(p<0.01)。一方大腿骨頸部の骨粗鬆症では有病率に有意な差はなかった。男性の腰椎L2-L4あるいは大腿骨頸部の骨粗鬆症年代別有病率を2015年の国勢調査の男性人口(40歳以上)に換算したところ、約140万人の男性が骨粗鬆症の範疇に入ることがわかった。さらに骨粗鬆症と診断された男性の骨粗鬆症役の服薬率は極めて低いこと、しかし10年後の第4回調査においては服薬率は低いながらも上昇傾向にあることもわかった。本研究結果は学術誌に投稿中である(J Bone Miner Metab, 2022, 投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ROADスタディ13年目の追跡調査を実施し、13年目のデータセットを完成した。このデータセットを用いて、男性骨粗鬆症の有病率の推移を解明し、論文投稿中である(J Bone Miner Metab, 2022, 投稿中) 。 令和4年度には本コホートの17年目の追跡調査を実施する予定である。COVID-19の収束が予断を許さない状況であるため、追跡調査が延期される可能性はないとはいえないが、すでに検診実施を前提として自治体との協議を開始しており、検診準備作業は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は地域住民コホートROAD (男性参加者1,061人)の17年目の追跡調査を山村コホートにおいて実施する予定となっている。文書によるinformed consentを得られた検診参加希望者を対象とし、以下の項目の検診を実施する: 1)既往歴、転倒、骨折歴、家族歴、職歴、飲酒、喫煙、嗜好品、骨関節の痛みなどの自覚症状、WOMAC、SF-8やEQ-5DによるQOL、栄養調査など400項目、 2)全身の骨・関節に関する理学所見、3)血圧、身長、体重、翼幅、手首回り、腹囲、握力の測定、4)開眼片足立ち検査、いす立ち上がり検査、歩行速度、5)DXA(Hologic Discovery)にて、腰椎L2-4、大腿骨の骨密度を測定。6)膝立位前後像、脊椎前後像、骨盤正面像のX線撮影、7)インピーダンス法(Tanita MC190)により、四肢筋量を測定、8)大腿四頭筋力の測定(アルケア ロコモスキャン)9)血液、尿検査:血算、血糖、HbA1c、脂質、腎機能、肝機能、炎症マーカー、尿潜血、糖、蛋白測定、10)mini mental statement examinationにより認知機能検査を実施、11)脳MRI検査:脳萎縮度の判定、12) 要介護、死亡、転出の有無の確認。 検診終了後、検査結果を対象者に返送するとともに、内容について説明会を実施し、希望者の医療相談に対応する。その後、検診データ入力を開始する。入力・データ確認を実施した後、個人情報を消去し、ROADコホート17年目の第6回調査(山村部)男性運動器疾患予防用データセットを完成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本研究は、男性のライフステージから運動器疾患の実態を解明する住民コホート研究であるが、令和3年度はCOVID-19の流行とロックダウンがあり当初予定していた検診後指導や、次回の検診の説明会を実施できなかったため差額が生じた。成果発表を予定していた学会もオンライン学会への変更などがあったため差額が生じた。 (使用計画)次年度はROADスタディ17年目の追跡調査(山村)を実施する予定となっており、次年度に使用する。本研究計画全体の進捗に変更はない。
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