研究実績の概要 |
我々は2005年に設定した住民コホートROAD(Research on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability, 男性参加者1,061人, 平均71歳)に長期蓄積した情報を用いて、男性における運動器疾患の中からまずOPを研究対象疾患とし、それらの疫学指標、予後及び危険因子を解明することを目的とした。 まず男性OPの長期トレンドを検討した。ベースライン調査および10年目の第4回調査結果の同年代のOPの有病率を比較したところ、男性のOPは腰椎において近年有意に低下していることがわかった(J Bone Min Metab40: 829, 2022)。 次に第3回ROAD study参加男性513人を6年間追跡しその予後を確認した。6年間で要介護発生が確認できたのは22人であった。6年後の要介護の有無を目的変数とし、ベースライン時のOPの有無を説明変数とし、年齢、体格、地域を調整して、ロジスティック回帰分析を行ったところ、OPありの要介護発生に対するオッズ比は14.7 (95%信頼区間2.2-97.3, p=0.005)となり、男性OPはその後の要介護の発生に有意に影響を及ぼしていることがわかった。一方死亡との関連は有意ではなかった(オッズ比2.7, 0.61-12.2, 0.186)。次に男性OPに関連する要因として性ホルモンに着目し、血清estradiol,dehydroepiandrosterone sulfate,free testosterone値とOPとの関連を解析したがいずれも有意ではなかった。 今回の結果から、長期的にみると男性OPの有病率は低下傾向にあるが、男性OPになると要介護のリスクが遥かに高いことがわかり、男性運動器疾患予防の重要性が示唆された。今後他の運動器疾患についても同様の解析を実施する。
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