研究実績の概要 |
M. intracellulareは、M. aviumと並んで肺MAC症の主要な病原体であり、起因菌種の20~30%を占める。今回、臨床経過の異なる肺MAC症患者由来のM. intracellulare臨床菌株(進行例3株、安定例4株)に対して、トランスポゾンシーケンシング(TnSeq)を実施した。TnSeqで同定した臨床菌株共通の生存必須遺伝子として、抗結核薬の標的遺伝子である、gyrA-gyrBおよびtopA(ニューキノロンの標的遺伝子), embB(エタンブトールの標的遺伝子), atpA-atpG-atpD(ベダキリンの標的遺伝子), inhA(イソニアジドの標的遺伝子), alr(サイクロセリンの標的遺伝子), rpoC(リファンプシンの標的遺伝子)が挙がってきた。イソニアジドは肺MAC症に対する臨床的有効性に乏しいが、薬剤標的としては有効であることが示された。さらに、新規抗結核薬として研究が進められている薬剤標的glcB(リンゴ酸合成酵素)、type VII分泌装置を構成する遺伝子群(eccC, eccB, eccB)も臨床菌株共通の生存必須遺伝子として挙がってきた。共通生存必須遺伝子プロファイルに基づいた薬剤の組み合わせとして、エタンブトール+ニューキノロン+ベダキリン+リファンピシン(あるいはその他のリファマイシン系薬剤)の有望性が示唆された。臨床菌株共通の生存必須遺伝子プロファイルは、既存薬剤の有望な組み合わせの情報以外にも、将来的な薬剤開発に向けた標的情報も含まれることから、肺MAC症治療法向上に大いに貢献できる。
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