研究課題
今回、臨床経過の異なる肺MAC症患者由来のM. intracellulare臨床菌株(進行例3株、安定例4株)に対して、トランスポゾンシーケンシング(TnSeq)を実施した。寒天培地への植菌を経ずに直接DNAを採取する方法は、実験結果が不安定であったため、寒天培地への植菌を経て変異株ライブラリーを作製してからDNAを抽出する定石通りの方法で実験を進めた。TnSeqで同定した臨床菌株共通の生存必須遺伝子として、既存の抗結核薬の標的遺伝子以外にも、glcB(リンゴ酸合成酵素)、type VII分泌装置を構成する遺伝子群(eccC, eccB, eccB)も臨床菌株共通の生存必須遺伝子として挙がってきた。現行の治療薬の標的が生存必須遺伝子として同定されたことから、in vivo治療効果法確立を視野に入れ、単剤治療(リファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシン、アミカシン)、および多剤併用療法群との間で治療効果を検討した。その結果、クラリスロマイシン単剤、あるいはクラリスロマイシンを含む多剤併用療法で最も肺内菌数減少・炎症改善効果が強かった。一方、リファンピシン単剤では、肺内菌数は減少せず、イソニアジドとリファンピシンを含んだ結核治療初期におこる「初期増悪」に類似した炎症増強効果を認めた。本研究により、現行治療薬の標的以外にもMAC病原体の治療標的が存在すること、ならびに感染マウスモデルを使ったin vivoでの治療効果の判定法を確立できたことから、誌上発表を行った(Tateishi Y. BMC Microbiol. 2023;23(1):94)。
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