研究課題/領域番号 |
21K19638
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
下澤 伸行 岐阜大学, 高等研究院, 特任教授 (00240797)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 新生児スクリーニング / 難病克服支援 / 予防医学 / 副腎白質ジストロフィー / 早期診断 |
研究実績の概要 |
本研究では根治的な治療法が開発され、早期の治療開始が予後改善に直結する遺伝性難病に対して、①特定の地域において新生児スクリーニングの対象疾患を拡大するために必要な実践的診療支援モデルを確立して、その地域における全ての患者の発症前診断から発症予防、難病克服に繋げる。さらに②特定の希少疾患に対して、開発した診断法を精度管理して施設を衛生検査所に登録して保険診療にて臨床実装化を図る。この2つのシステムを確立し成果、課題を集積・検証して、最適な実装化モデルを全国に提唱して社会貢献に繋げる。将来的には発症後治療を新生児スクリーニングによる発症予防にパラダイムシフトする必要性を社会に提唱し、予防医学による難病克服を目指している。 初年度の成果として、①岐阜県において原発性免疫不全症、ライソゾーム病(ファブリー病、ポンペ病、ムコ多糖症1型、2型)、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症の7疾患について保護者の同意を得た児を対象に新生児スクリーニング追加検査を実施した。さらに②岐阜大学が構築した副腎白質ジストロフィー&ペルオキシソーム病診断システムを岐阜大学高等研究院内に精度管理を整備して衛生検査所に登録した遺伝子検査室を設置、稼働し、令和3年度より開始した副腎白質ジストロフィー新生児スクリーニング陽性者の精密診断を岐阜県以外にも愛知県、宮崎県に提供可能にした。現在、これらの実績より得られた様々な成果と課題を抽出して次年度に繋げている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 岐阜県を地域対象にした拡大新生児スクリーニング支援モデルの構築 初年度は岐阜県において原発性免疫不全症、ライソゾーム病(ファブリー病、ポンペ病、ムコ多糖症1型、2型)、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症の7疾患について保護者の同意を得た児を対象に新生児スクリーニング追加検査を実施した。令和3年度の1年間に県内全出生児の70%にあたる9,124名が受検し、結果を提供した。さらにスクリーニング検査での全ての陽性者は岐阜大学病院小児科を受診し、保護者への疾患情報の説明、正確な診断、遺伝カウンセリング、診断患者の適切な治療につながるフォローアップシステムを構築し、提供した。さらに得られたエビデンスを集積、課題を抽出し対策を検討して、政策研究班等での議論を踏まえて全国に発信する。 2. ALDを疾患対象にした拡大新生児スクリーニング全国診断支援モデルの構築 初年度は岐阜大学高等研究院内に遺伝子検査室を設置し、衛生検査所登録を取得、スクリーニング検査にて副腎白質ジストロフィーが疑われた陽性者の遺伝子診断を岐阜県以外にも愛知県、宮崎県に提供するシステムを構築し、稼働した。1年間の実績として23例の陽性者に対して、ガスクロマトグタフ質量分析装置を用いて血中極長鎖脂肪酸とペルオキシソーム代謝産物であるフィタン酸、プラスマローゲンの測定に、副腎白質ジストロフィーの責任遺伝子であるABCD1遺伝子解析を施行して、精密診断結果を提供した。さらに遺伝カウンセリングから家系解析も施行して、得られたエビデンスを集積、課題を抽出し対策を検討して、政策研究班等での議論を踏まえて全国に発信する。
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今後の研究の推進方策 |
1. 岐阜県を地域対象にした拡大新生児スクリーニング支援モデルの構築 初年度に岐阜県で構築、実施した7つの疾患を対象にした拡大新生児スクリーニング検査を継続し、受検者数を増やすとともに陽性者の正確な診断のための解析研究を継続、フォローアップ体制も検証して、実績を蓄積する。2年目は岐阜県で始めた支援モデルを石川県、三重県から他県にも拡大するとともに、3年度に向けては対象疾患の拡大も検討する。これらの実績を全国にも発信して公的スクリーニング選別のためのエビデンスに基づく政策提言につなげる。 2. ALDを疾患対象にした拡大新生児スクリーニング全国診断支援モデルの構築 初年度に岐阜県、愛知県、宮崎県で開始したALD新生児スクリーニング支援モデルを継続するとともに、さらに他県にも拡大して全国に対応可能なモデルを構築、実証する。その中で得られた実績と課題を検証し、政策研究班でも発表、議論し、対象疾患選定に繋げる。今後、ALD以外にも対象となる希少疾患は増加することが予想されるが、全ての希少疾患の精密診断施設を各都道府県に設置することは現実的には難しく、本研究で構築したALDの全国診断支援モデルを他の希少疾患にも応用可能な形で提供する。 最終的には本研究での2つの支援モデルを最適化して全国に発信することにより、より多くの治療法のある難病の新生児の早期診断による発症予防を達成する。
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