本研究は根治的な治療法が開発され早期の治療開始が予後改善に直結する遺伝性難病に対して、新生児期に疾患スクリーニングを導入して発症前診断からの治療介入により症状の進行阻止、発症予防を目指すために後述の2つのモデルを構築して3年間にエビデンスを創出して国内実装に繋げるための萌芽研究である。① 地域モデルとして特定の地域において複数の疾患を対象にした新生児スクリーニングの対象疾患を拡大するために必要な実践的なモデルを確立して、その地域における全ての患者の発症前診断から発症予防、難病克服に繋げるとともにその地域モデルを国内に普及する。さらに② 疾患モデルとして特定の希少疾患に対して開発した診断システムを精度管理して全国の新生児スクリーニング陽性者の精密診断を保険診療で提供可能な診断拠点を確立する。 3年間の成果として、①地域モデル:初年度に岐阜県において確立した原発性免疫不全症、ライソゾーム病(ファブリー病、ポンペ病、ムコ多糖症1型、2型)、副腎白質ジ ストロフィー(ALD)、脊髄性筋萎縮症の7疾患の新生児スクリーニング追加検査を2年目には石川県、三重県、3年目には対象疾患にゴーシェ病、対象地域に福井県まで広げて実施した。②疾患モデル:岐阜大学が構築した保険診療によるALD精密診断システムを用いて全国の診断施設の依頼を受けて、100例以上のスクリーニング陽性者の極長鎖脂肪酸と遺伝子解析による診断結果を病的意義や対応方法のコメントをつけて迅速に提供した。 以上により抽出された受検時の説明・同意方法や陽性児や家系内解析における遺伝カウンセリング、同定されたレアバリアントの病原性評価など様々な課題をより広い分野で論理的に評価し、将来的には発症後治療から新生児スクリーニングによる発症予防にパラダイムシフトする必要性を社会に提唱し、予防医学による難病克服に繋げる。
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